口パクと変装の達人 | DVD放浪記

口パクと変装の達人

NHK放送時はほぼ完全にパスしていた、グラナダ・テレビ製作の「シャーロック・ホームズの冒険」をレンタルDVDで観る。一時はDVDセットの購入も考えたのだが、高すぎるのと、英語字幕がないことで完全にパスしていたものだ。ところが、最近その版元、ハピネットが、英語字幕と完全日本語吹き替えをつけたバージョンをリリースした。このレンタルDVDはそのシリーズ第1巻にあたるもので、「ボヘミアの醜聞」と「踊る人形」が収録されている。

ハピネット・ピクチャーズ
シャーロック・ホームズの冒険 完全版 Vol.1

さて、主演のジェレミー・ブレットにとって、このシャーロック・ホームズは生涯の当たり役となったわけだが、この「ボヘミアの醜聞」を観てたまげたのは、その変装のすばらしさだ。これまで、テレビ番組や映画などでさまざまな「変装」例を山ほど見てきたが、どれもいまいちの出来ばかりで、「これは、やられた!」というものは数えるぐらいしかない(「その代表作といえば……」と書きかけて、この種のネタばれはやはりまずかろうと自主規制)。だが、このエピソードでのジェレミー・ブレットの変身ぶりはただただ見事と言うしか言葉がない。

ワーナー・ホーム・ビデオ
マイ・フェア・レディ スペシャル・エディション

「マイ・フェア・レディ」(1964年)に主演したオードリー・ヘップバーンの歌(の大部分)が吹き替えだったことはよく知られているが、同じ映画に出演したジェレミー・ブレットが歌う「君住む街で」も、実は吹き替えだったということを、彼自身、「マイ・フェア・レディ」の特典映像で明かしている。


それを知って、当初、あの青年役(ジェレミー・ブレットという俳優名は何の意味も持っていなかった)には、きっと実力のある歌手が起用されたのだろうと思っていた私はびっくりしたが、同時に、いかにも朗々と歌い上げているように演じて見せる彼の「なりすまし」ぶりには、改めて感心したものだ。まあ、役者ならやれて当然なのだろうが、先の「ボヘミアの醜聞」における彼の変装は、いわゆる演技以上にテクニカルな側面もあるのだが、その変装用のギミックをひとつひとつ落として、普段の「ホームズの素顔」に戻っていくプロセスを見せる場面はなかなかのもので一見の価値がある。

ハピネット・ピクチャーズ
シャーロック・ホームズの冒険 完全版 DVD-BOX

参考価格: ¥78,200 (税込)
価格: ¥61,159(税込)
OFF: ¥17,041 (22%)


全体に画質がやや眠い感じなのが惜しまれるが(これは新世代DVD版登場の際には、リマスターされるのだろうか)、時代の雰囲気を再現しようと努めた丁寧な作りには好感がもてる。私も余裕があればBOXセットを購入したいところだが、いかんせん、このマニア向け価格ではまだちょっと手が出ない。当面は活字のほうで我慢するしかなさそうだ。

というわけで、第2巻をレンタルしてくる。