アメリカの自己弁護?
米国の海兵隊を描いた映画は無数にあるが、ある映画(ひ・み・つ)を観たついでにもう一度観なおしてみたくなったのがこの作品「英雄の条件」(2000年)だ。

ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
英雄の条件
◆「英雄の条件」予告編
舞台はイエメン。一般市民のデモ隊に取り囲まれた米国大使館の大使(ベン・キングズレー)からの救出要請を受けて、近傍海域(たぶんペルシア湾?)洋上のヘリ空母から海兵隊が出動する。彼らが大使館に到着してみると、状況は悪化の一途をたどっており、投石に加え、火炎瓶や銃撃が始まっている。
まずは大使をヘリコプターで退避させ、彼らは屋上に上がる(この意味がよくわからなかったのだが、基本的に高所を確保するほうが守りやすいということなのか、それとも、最悪の場合、屋上からヘリコプターに搭乗し脱出を図るということなのか)。
だが、彼らは隣接する建物の屋上に陣取る狙撃兵からの銃撃によって釘付け状態になり、部下に死傷者が出始める(ここまで海兵隊員は応射を控えている)。群集の中にも銃を持ち発砲してくる者が多数いることを認めたチルダーズ大佐(サミュエル・L・ジャクソン)は、遂に部下にデモ隊への発砲を命じる。副官は、女性や子どもを傷つけずに銃を使用することはできませんと一度は発砲を躊躇するのだが、大佐の命令に変更はなかった。
圧倒的な火力の差によって、瞬く間に暴徒を鎮圧はしたものの、犠牲者の中には多数の老人、女性、子どもの姿があった。チルダース大佐は殺人容疑で軍法会議にかけられることとなる。
一般市民を巻き添えにしたことで、国家の威信失墜を恐れた国家安全保障担当補佐官(ブルース・グリーンウッド)は、チルダーズ大佐をスケープゴートにするよう画策する。大使館の外壁には複数のビデオカメラが据え付けられており、外部の模様が24時間体制で録画されており、そのテープには群集から発砲が行われていた映像が残されていたのだが、補佐官はビデオテープの存在をもみ消したうえで、大使にも偽証をするよう迫るのだった。
チルダーズ大佐は、かつての戦友、ホッジス大佐(トミー・リー・ジョーンズ)に弁護を依頼するが、圧倒的に形勢不利の状況下にあって、アル中気味で、弁護士としての力量もいまいちのホッジス大佐が、切れ者の検察官(ガイ・ピアース)を向こうにまわし、チルダーズを救うことはできるのか……。
※ ※ ※
監督はウィリアム・フリードキン。役者はそろっているし、原作者のジェームズ・ウェッブは、軍の中枢部にいた人物であり、期待できる作品だったのだが、実際には……。
軍の協力を取り付けることができた(強襲揚陸艦タラワでの撮影に海軍が協力している)段階でこの作品の限界は明らかだが、それでも、チルダーズ大佐が群集からの発砲を目撃した部分を一種の「藪の中」的に処理し、それを後半の法廷場面で検証していく形をとっていたら、もっと引き締まった作品になったのではないだろうか。
もちろん、軍事法廷ものだからといって、いつもいつも「ケイン号の叛乱」クラスのものを期待できるわけではないことぐらいわかってはいるのだが、テーマがより現代的、かつ切実なものとなっているだけに、その最終的な出来栄えが残念でならない。
ケイン号の叛乱 [DVD]/バン・ジョンソン,ハンフリー・ボガート,フレッド・マクマレイ

¥1,480
Amazon.co.jp
ちなみに、初めて「ケイン号の叛乱」をテレビなどで観るときは、間違っても、もう物語の決着がついたと思われるところでチャンネルを変えたりしないこと。本当のドラマはそこから始るのだから。
…………………………………………………………………………………
英雄の条件
Rules of Engagement
2000年 カラー 130分
…………………………………………………………………………………
◆スタッフ
監督:ウィリアム・フリードキン
製作:リチャード・D・ザナック/スコット・ルーディン
製作総指揮:アダム・シュローダー/ジェームズ・ウェッブ
脚本:スティーヴン・ギャガン
原作;ジェームズ・ウェッブ
撮影:ウィリアム・M・フレイカー
音楽:マーク・アイシャム
◆キャスト
ヘイズ・ホッジス大佐:トミー・リー・ジョーンズ
テリー・チルダーズ大佐:サミュエル・L・ジャクソン
マーク・ビッグス大佐:ガイ・ピアース
ムーラン大使:ベン・キングズレー
ソーカル補佐官:ブルース・グリーンウッド
大使夫人:アン・アーチャー
ペリー大将:デイル・ダイ(*)
カオ大佐:バオアン・コールマン
…………………………………………………………………………………
* もちろん、あのデイル・ダイだ。この映画の軍事アドバイザーでもある。

ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
英雄の条件
◆「英雄の条件」予告編
舞台はイエメン。一般市民のデモ隊に取り囲まれた米国大使館の大使(ベン・キングズレー)からの救出要請を受けて、近傍海域(たぶんペルシア湾?)洋上のヘリ空母から海兵隊が出動する。彼らが大使館に到着してみると、状況は悪化の一途をたどっており、投石に加え、火炎瓶や銃撃が始まっている。
まずは大使をヘリコプターで退避させ、彼らは屋上に上がる(この意味がよくわからなかったのだが、基本的に高所を確保するほうが守りやすいということなのか、それとも、最悪の場合、屋上からヘリコプターに搭乗し脱出を図るということなのか)。
だが、彼らは隣接する建物の屋上に陣取る狙撃兵からの銃撃によって釘付け状態になり、部下に死傷者が出始める(ここまで海兵隊員は応射を控えている)。群集の中にも銃を持ち発砲してくる者が多数いることを認めたチルダーズ大佐(サミュエル・L・ジャクソン)は、遂に部下にデモ隊への発砲を命じる。副官は、女性や子どもを傷つけずに銃を使用することはできませんと一度は発砲を躊躇するのだが、大佐の命令に変更はなかった。
圧倒的な火力の差によって、瞬く間に暴徒を鎮圧はしたものの、犠牲者の中には多数の老人、女性、子どもの姿があった。チルダース大佐は殺人容疑で軍法会議にかけられることとなる。
一般市民を巻き添えにしたことで、国家の威信失墜を恐れた国家安全保障担当補佐官(ブルース・グリーンウッド)は、チルダーズ大佐をスケープゴートにするよう画策する。大使館の外壁には複数のビデオカメラが据え付けられており、外部の模様が24時間体制で録画されており、そのテープには群集から発砲が行われていた映像が残されていたのだが、補佐官はビデオテープの存在をもみ消したうえで、大使にも偽証をするよう迫るのだった。
チルダーズ大佐は、かつての戦友、ホッジス大佐(トミー・リー・ジョーンズ)に弁護を依頼するが、圧倒的に形勢不利の状況下にあって、アル中気味で、弁護士としての力量もいまいちのホッジス大佐が、切れ者の検察官(ガイ・ピアース)を向こうにまわし、チルダーズを救うことはできるのか……。
監督はウィリアム・フリードキン。役者はそろっているし、原作者のジェームズ・ウェッブは、軍の中枢部にいた人物であり、期待できる作品だったのだが、実際には……。
軍の協力を取り付けることができた(強襲揚陸艦タラワでの撮影に海軍が協力している)段階でこの作品の限界は明らかだが、それでも、チルダーズ大佐が群集からの発砲を目撃した部分を一種の「藪の中」的に処理し、それを後半の法廷場面で検証していく形をとっていたら、もっと引き締まった作品になったのではないだろうか。
もちろん、軍事法廷ものだからといって、いつもいつも「ケイン号の叛乱」クラスのものを期待できるわけではないことぐらいわかってはいるのだが、テーマがより現代的、かつ切実なものとなっているだけに、その最終的な出来栄えが残念でならない。
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ちなみに、初めて「ケイン号の叛乱」をテレビなどで観るときは、間違っても、もう物語の決着がついたと思われるところでチャンネルを変えたりしないこと。本当のドラマはそこから始るのだから。
…………………………………………………………………………………
英雄の条件
Rules of Engagement
2000年 カラー 130分
…………………………………………………………………………………
◆スタッフ
監督:ウィリアム・フリードキン
製作:リチャード・D・ザナック/スコット・ルーディン
製作総指揮:アダム・シュローダー/ジェームズ・ウェッブ
脚本:スティーヴン・ギャガン
原作;ジェームズ・ウェッブ
撮影:ウィリアム・M・フレイカー
音楽:マーク・アイシャム
◆キャスト
ヘイズ・ホッジス大佐:トミー・リー・ジョーンズ
テリー・チルダーズ大佐:サミュエル・L・ジャクソン
マーク・ビッグス大佐:ガイ・ピアース
ムーラン大使:ベン・キングズレー
ソーカル補佐官:ブルース・グリーンウッド
大使夫人:アン・アーチャー
ペリー大将:デイル・ダイ(*)
カオ大佐:バオアン・コールマン
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* もちろん、あのデイル・ダイだ。この映画の軍事アドバイザーでもある。