酒飲みの自己弁護?
本当に久しぶりに「酒とバラの日々」(1962年)を観る。たった一度テレビで観ただけなのだが、アルコール依存症の問題を真正面から描いた作品として強く印象に残っている映画だ。ヘンリー・マンシーニの曲はもちろんご存知だろうが、その甘いメロディとは裏腹に、展開する物語は実にシビアで、ラストも安易なハッピーエンドではないところがアメリカ映画にしては珍しい。
注目すべきは、主演のジャック・レモンが「アパートの鍵貨します」(1960年)の主人公C・C・バクスターを思わせる役柄で、コメディではなく、シリアスな演技に挑戦したところだろう。惜しくもこの作品ではオスカー(主演男優賞)を逃しているが、受賞しても当然の熱演だったと思う。このDVDに特典映像として収められている長めの予告編には、脚本を見てこの役はぜひやりたいと思ったと語るジャック・レモンのコメントが収録されていてたいへん興味深い。
監督がブレイク・エドワーズというのもやや意外な気がするが、その製作意図などについては、彼の音声解説で確認してみようと思う。
- ワーナー・ホーム・ビデオ
- 酒とバラの日々
アルコール依存症の悲惨さを描いた作品はほかにもいろいろある。ビリー・ワイルダー監督の「失われた週末」(1945年)などはその筆頭だろう。多くのコメディ作品で親しまれるワイルダー監督だが、これは「社会派」系列のもので、かなり覚悟して観る必要があるだろう。
- ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン
- 失われた週末
このアルコール依存症の問題をもう少しソフトタッチに扱ったのが、ジェームズ・スチュアート主演の「ハーヴェイ」(1950年)である。ファンタジー風なつくりが施されているあたりがミソで、前の2本ですっかり気が滅入ってしまったという方は、お口直しにこちらをどうぞ。もっとも、その「ファンタジー」がまさしく主人公の「妄想」であるとしたら、これはこれで怖い話ではあるのだが。
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- ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン
- ハーヴェイ
新しいところで、この手のものとなると、ニコラス・ケイジとエリザベス・シューが主演した「リービング・ラスベガス」(1995年)やサンドラ・ブロック主演の「28DAYS」(2000年)あたりになるのだろう。もちろん、どれを観ようが観まいが皆さんの自由ではあるわけだが、これらすべて未見という方には、私としては、最初の3作をおすすめしておきたい。そして1本だけ観るとするなら、やはり「酒とバラの日々」だろうか……。
- ジェネオン エンタテインメント
- リービング・ラスベガス
- ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
- 28DAYS コレクターズ・エディション