「慕情」のラストと朝鮮戦争のこと | DVD放浪記

「慕情」のラストと朝鮮戦争のこと

このところ過去の名画がDVDの形で多数リリースされるようになってきた。特にそのあたりを前面に押し出した20世紀フォックスの「スタジオ・クラシック・シリーズ」は、価格が高いのが玉に瑕だが、それでも私が未見の傑作、佳作を提供してくれる宝の山。予算には限りがあるので購入するのは未見の作品に絞っているのだが、このあいだは、すでに何度も観ている作品2本を衝動買いしてしまう。で、昨日久しぶりに観たのが、ジェニファー・ジョーンズとウィリアム・ホールデンが共演した「慕情」(1955年)だ。

20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
慕情

買いはしたものの、実は、もうとても観るに耐えないのではないかと内心恐れていたのだが、メロドラマの王道をゆくこの作品は、そのベタさゆえにか、いまだ古びていないことを再確認してしまった。まあ、これは私の歳のせいか……。


で、今回観直してふと思い出したことがある。ラスト近く、マークの訃報のあとに彼からの手紙をハン・スーインが手にするという、この出来事の順序を他の映画(同じ1955年製作)でも観た覚えがあるのだ(今度その映画を観て確認しなくては)。「慕情」以前にもそういう例があったのかどうかは分からないが、以後、この手法は繰り返しあちこちで流用されているような気がする。もちろん、戦争がある限り、これはただの「ドラマのおきまりプロット」ではなく、現実に起こりうる悲劇でもあり続けるのだろうが……。


パラマウント・ホーム・エンタテインメント・ジャパン
トコリの橋

「いまだ古びていない」などと書いてしまったが、さすがに朝鮮戦争の勃発という時代背景を身近なものと感じることは今となっては難しい。ウィリアム・ホールデンがグレイス・ケリーと共演した「トコリの橋」(1954年)などで、そのあたりの危機感、切迫感を多少なりとも窺い知るばかりだ。もちろん、それはアメリカ側からの視点で描かれたものではあるし、この映画を観ると、むしろ当時の日本の描かれ方のほうが気になってしまったりするのだが。