【研究課題レポート抜粋】ラック内温度の現状分析 | サイバーエージェント 公式エンジニアブログ
 このエントリは、第1回研究課題レポートにおいて優秀賞を受賞した作品で、社員のMatuiさんによって作成されました。

1. はじめに

データセンターにおけるラック内温度のグラフ化を行い、そこから課題を見出すことによって、データセンター内の熱問題解決策の提案を行うことを目的としている。

【DC1】及び【DC2】において、それぞれ2ラックずつ温度測定を行った。

2. 温度測定

【DC2】Aラック 温度変化

  1. サーバ台数:13台
  2. ラックタイプ:密閉型
  3. 床:オープンフロア
  4. 使用総ワット数(概算):4548W

  5. 対象期間2008/07/11 00:00 ~ 2008/08/01 07:45
    計測間隔15分
    計測記録数2048回
    平均温度30.4℃
    最高温度34.0℃
    最低温度29.0℃
    標準偏差0.7℃


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【DC2】Bラック 温度変化

  1. サーバ台数:19台
  2. ラックタイプ:密閉型
  3. 床:オープンフロア
  4. 使用総ワット数(概算):8587W

  5. 対象期間2008/07/11 00:00 ~ 2008/08/01 07:45
    計測間隔15分
    計測記録数2048回
    平均温度35.8℃
    最高温度38.5℃
    最低温度29.5℃
    標準偏差0.5℃


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【DC1】Cラック 温度変化

  1. サーバ台数:19台(計測時点)
  2. ラックタイプ:オープン型
  3. 床:オープンフロア
  4. 使用総ワット数(概算):6374W

  5. 対象期間2008/07/11 00:00 ~ 2008/08/01 07:45
    計測間隔15分
    計測記録数2048回
    平均温度29.3℃
    最高温度31.5℃
    最低温度28.5℃
    標準偏差0.3℃


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【DC1】Dラック 温度変化

  1. サーバ台数:21台
  2. ラックタイプ:オープン型
  3. 床:オープンフロア
  4. 使用総ワット数(概算):10122W

  5. 対象期間2008/07/11 00:00 ~ 2008/08/01 07:45
    計測間隔15分
    計測記録数2048回
    平均温度31.9℃
    最高温度33.0℃
    最低温度30.0℃
    標準偏差0.3℃


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※参考※ 1日あたりの温度変化(7/11)

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3. 考察

温度測定結果から、データセンタ間で大きな差異が見られたのは以下の点である。

  • 標準偏差が、DC1よりも、DC2のほうが大きい

  • DC1は、ホットアイルに対する排気が十分ではないため、熱の逃げ場を失っている。(フロア全体で、暖気の排気口がほぼ一か所にしか存在しない)
  • 最高温度と最低温度の差が、DC2のほうが開きがある

  • DC2は、密閉型ラックのため、一度上がった熱を放散するのに時間がかかっている可能性が考えられる。(前述のとおり、ホットアイルに排気口がないのも問題の1つだと考えられる。)
  • 1日当たりの温度変化を取り上げてみた場合、1日を通して、DC1のほうが、温度が安定している。

  • DC1は密閉型ではなく、フロント・バックともにオープン型のラックであるため、外へ熱が逃げやすい。データセンタの冷却自体も、DC1のほうがすぐれているため、ラック内の温度上昇など、温度変化があまり見られない可能性が考えられる。


4. 今後の課題

3.のような考察から、大枠で、以下のような取り組みの必要性が考えられる。

  1. データセンタ自体の冷却効率の改善
  2. ラック単位での冷却効率の改善
  3. サーバ単位での冷却効率の改善


以上の3点kら、原図上から考えて現実的な取り組みとして行えることは b c である。

b に関して、今後は「ブランクパネルの利用によるラック内熱循環の効率化」を提案する。これは、来期に実際に計測を行い、ブランクパネルを設置したラック自体の冷却効率化の測定と、それが隣接ラックに与える影響を測ることで、効果を測定する。

 現状、DC2においては、データセンタ自体の冷却能力が低い。それを補うためには、ラック単位での冷却効率を上げる必要がある。てっとり早く、なおかつ比較的に安価にできるものの一つとしては、ブランクパネルの利用があげられる。

c に関しては、OSの省電力化デーモンを利用して、サーバ自体の消費電力の削減による熱問題解決へのアプローチを考えている。

 これは、ラック自体の冷却効率を上げるために、サーバ自体の消費電力を削減することで貢献できると考えるからである。
 そもそも、データセンタ内の熱上昇は、サーバやネットワーク機器などによって引き起こされるものであるから、その大元自体の熱拡散を考える必要がある。