~グラハム15歳の春~
母ちゃんを突然亡くしてから8年。
家を飛び出したグラハムはその後、一人で歩いているところを
警察に保護されるも。
母ちゃんの姉妹、親戚の家をたらい回しにされ。
その間、畑仕事を手伝わされるばかりで、まともに学校へ通わせて
くれる訳ではなく。
義務教育というものを、まともには受けてはいなかった・・・。
そしてある日、グラハムは親戚の家を飛び出し家出。
もちろん行く当てもなく、街をぶらぶら歩きながら。
住み込みでできる仕事は無いか?食べる事に困らない仕事は無いか?
そう考えた時に、この1枚の募集の知らせを目にするのだった・・・。
”料理人募集中”
字は読めなかったものの、この紙が何を意味しているのかは知っていた。
何件もの料理店へ行くも断わられ続けていたから他に無かった・・・。
働きながら、お金を稼いだ上に、お店の余りモノでいいから食べる事には
グラハム:ここで10件目かぁ・・・今日中には何としないと・・・。
グラハム:リョーリニン・・・ボシュウ・・・チュウ・・・。
マンセル:裕子さん、そろそろ銀行閉まっから気を付けて
行ってきてなぁ・・・。
裕子:はいはい!仕入れのお金が足りないんでしたねw。
あと、誰か若くて優秀な料理人さん。来ると良いですねぇ~。
マンセル:若いのが育って独立するのは、別に良いのさ。
家の暖簾を分ければある程度やっていけるだろうしな・・・。
グラハム:ごめんください!あのぉ~どなたかおりませんか?
グラハムは意を決して店の扉を開いた!
マンセル:ごめんよ!今日はお店休みなんだが・・・!?
グラハム:いや、あのぉ~表の紙を見まして・・・。
マンセルは一転して、募集の紙を貼って直ぐに人が来るとは
マンセル:まあ、いいからこっちへ入りなさい。
グラハム:お、おじゃまします!
すると突然、グラハムくんは土下座をし始めた。
グラハム:お願いします!ぼくを!ぼくを!料理人になりたいんです!
行くところも無いんで、どうか!どうか!ここで使って下さい!
お願いします!
裕子:ちょ、ちょっとあんたぁ~・・・いきなり何よぉ~もぉ。
マンセル:おいおいw!初めてきて・・・。まあまあ!顔をあげなさい。
裕子:料理人じゃないんじゃなくて・・・?
マンセル:そういう事ではない、これから修行だってできるんだから。
グラハム:ご、ご、ごごめんなさい。
何十件と断わられ続けてしまって・・・つい・・・。
マンセル:そーか、そんなに断わられ続けてここに来たんだね。
グラハム:あっ、はい!
マンセル:君、まだ若いね?家出でもしてきたんだろぉ?
正直に言いな・・・。
マンセルは今まで何人も若い料理人を看てきている経験上、
グラハムの素行を見た僅かの間に見切っていた・・・。
グラハム:はい、そーです。
グラハム:あの・・・実は・・・。
ぼく、学校にもちゃんと通わせてもらえなくて・・・。
何にも分からないんですが・・・。でも、おばちゃんが作ってくれた
みそ汁だけは美味しくて。こんな料理作れたらいいなぁ~って・・・。
仕事になったら良いなぁ~って思って・・・。
裕子:あら!大変。学校に行ってないの???
じゃあ、履歴書とは持ってないの?
グラハム:何ですか?その・・・リレキ・・・何とかって。
裕子:そうよ、履歴書とか経歴書とか・・・。あなたの今までの仕事
とか卒業した学校の経歴とかをまとめた書類よ・・・。
グラハム:ぼくは・・・小学校も出ていませんから・・・。
グラハムは、ここもダメかと落胆していた・・・。
グラハムはもう、諦めて帰ろうとしていた・・・。
マンセル:オイ!待て!!もうちょっと話を聞かせてくれないか?
帰るならそれからだって構わないだろ!?
マンセル:まあ、こっちに座って話を聞かせてくれないか?
裕子:あなた・・・そうね。もう少し聞いてみないと分からないわね。
そしてグラハムは、今日この日のこの時の出来事までを
マンセル夫婦に話していった・・・。
裕子:それは大変だったわねぇ・・・。でも、よく一人で
がんばりました!あなた、見込みあるかもよ!!この方なら。
マンセル:よし!!気に入った!!!
明日から洗い場に入ってもらうぞ!!!
ただし条件がある!!
グラハム:条件ですか・・・?
マンセル:その条件はな!
ここの洗い場で仕事して、一人前の料理人になる事!
それと、仕事をしながら。学校へ行く事だ!
グラハム:そーだ!学校だ!
マンセル:直ぐに学校へ行けとまでは言わない。仕事をきっちりと
覚えてからでもいい。それまではオレが仕事をお前に仕込む。
先輩の板前もここにはいるから、そいつの技を盗め。自分のモノに
グラハム:ありがとうございました!!<号泣
マンセル:そしたら、今日から。俺はお前の“親方”だ!
こっちは“女将さん”と呼びなさい!!
これはな、仕事の上だけの親方じゃないぞ。
人生の上での親方でもあるんだ、いいかい!忘れるなよ。
女将さん:部屋は離れの2階を使って、開いているところなら
どこでも1部屋使って。仕事着は・・・後で用意するから・・・。
グラハム:親方!女将さん!ぼ。ぼく、精一杯ここで働かせて
もらいます!よろしくお願いします!!
こうして、家出していた少年の居場所ができた・・・。
翌日の営業日・・・。
和食料理のお店には、連日お客さんが来ていた・・・。
板前のもしゅもしゅ、親方は後ろで見守りながら創作料理の
段取りをし・・・。
グラハムは黙々と、洗い場で料理人になるべく。
修行の日々が始まった・・・。
この時既に、グラハムは運命の出会いを迎えていた・・・。
引き続き、【舞台:65年目の恋文(ラブレター)第2幕⑨】
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