磁界共鳴方式ワイヤレス給電の真実 | ワイヤレス給電を操るためのパワエレ技術講座|コイルの位置ずれ対策

ワイヤレス給電を操るためのパワエレ技術講座|コイルの位置ずれ対策

ワイヤレス給電の開発課題
・コイルの位置ずれ対策
・電力伝送距離の延長
・安定した充放電制御
がパワエレ技術でどのように解決できるのか。
ワイヤレス給電とパワエレの両面から、双方向ワイヤレス電源の開発実績に基づいたノウハウを解説します。

最近「置くだけ充電」という言葉を聞くようになりましたが、これはコネクターの金属接点で接続せずに携帯電話などを無接点充電器の上に置くだけで充電するというもので、
「ワイヤレス給電」という技術が使われています。「ワイヤレス給電」のほかに、「非接触給電」や「電力無線伝送」などと呼ばれることもあります。この技術は、電気自動車に搭載されている電池の充電への応用も盛んに研究されていますが、一般向けの製品化はまだのようです。

さて今回は、技術者向けなので前置きは以上で本題に入ります。

まず、ワイヤレス給電の勉強をした技術者・研究者のみなさんは、以下の図を見てどのように思いますか?
(※ この先は以下の図を見て「ワイヤレス給電」の話だとわかる人に向けて書きます)



おそらく、この図は「磁界共鳴方式」のワイヤレス給電の回路図だと考えた人が多いのではないかと思います。
インターネットでも「磁界共鳴方式」を解説しているところで類似の回路図はすぐ見つかります。
そして、磁界共鳴方式とは、アンテナコイルとコンデンサで決まる共振(共鳴)周波数を、1次側と2次側とで一致させて高効率で電力を伝送する方式と解説されています。
(図では、2次側の負荷はダイオード整流と電池としていますが、抵抗負荷でも同じです)

さて、この図は某大学の先生の論文に掲載された図を簡略化したものです。
先生は可変コンデンサ装置の研究をされており、この論文では、その可変コンデンサ装置を2次側に設置することでコイルの位置がずれても高効率でワイヤレス給電が可能であると述べられています。

ここまで読んで、この論文は「磁界共鳴方式」に関連していると思われる人がいるかもしれませんが、論文中に「磁界共鳴」という言葉は出てきません。
論文の理論的解説部分を要約すると、「コイルの相対位置のずれにより変化するコイルの自己インダクタンスを可変コンデンサで直列補償することで、コイルと可変コンデンサを合わせたリアクタンス成分を小さくでき高効率の電力伝送が可能となる」と述べられています。

先日、この先生にお会いした時に直接話を伺いましたが、この論文は電磁誘導方式だとおっしゃっていました。

まとめます。

電磁誘導方式と呼ばれるワイヤレス給電回路に対して、アンテナコイルの周辺にコンデンサを追加すると、コイルの距離を離したり位置をずらしたりしても電力伝送効率を高く維持することができます。
この効率向上が磁界共鳴現象によるものという説明(磁界共鳴方式)がインターネットや雑誌で多く見られますが、コイルのインダクタンス成分をコンデンサで補償(キャンセル)することで効率が向上するという理解も可能です。

この2つの立場はまったく異なり両立しないのですが、コンデンサの調整でコイルの位置がずれても高効率が維持できるという効果は同じであり、さらに回路図を見てもどちらなのか判断がつかないということから、私は理論的に正しい理解はどちらか一方だと思います。

今後、このブログで明らかにしていく予定ですが、私は電磁誘導方式にインダクタンス成分のコンデンサ補償を追加したという理解の方が正しいと考えています。

電気自動車の充電などでワイヤレス給電の実用化が早く実現できるように、理論的なアプローチによる検討を続け、その記録をこのブログに残しながら情報発信をしていきます。