ラノベ「双頭の鷲―ハプスブルク家物語―」
神聖ローマ帝国消滅、ナポレオンvsハプスブルク⑤
マリー・ルイーゼの降嫁にはナポレオンの裏事情が絡んでいた。
ナポレオンにはかつてジョゼフィーヌという8歳年上の恋女房がいた。
ナポレオンの名が世に知れ始めた頃は良かった。
愛する妻に褒められたいが故に、せっせ、せっせと手柄を立てる若き夫と社交下手な夫に代わり社交界の華として夫を立てる姉さん女房。
2人は頂点を目指して奮闘する戦友でもある、おあつらえなカップルだったのだ。
しかし、ナポレオンが皇帝になると、2人の間にある問題が浮上した。
後継者問題だ。
ナポレオンは後継者が欲しくて堪らなかった。
下級仕官だった時ならいざ知らず、皇帝にもなると自分の子供が欲しい!
ヨーロッパ統一の夢もあと一歩、なおさら苦労して作った自分の大帝国は息子に継がせたい!!…えっ、アナタ、自由と平等の名の元に国民を解放するんじゃなかったんでしたっけ?…と誰もが首をかしげたくなるが、いざ自分が王座に就いたら、それを独占したいと思うのが人間と言うものらしい。
「アンタに子づくりの能力がないんじゃないのぉ? 私には問題ないわよ、男の子を生んでいるのは実証済ですからねっ!!」
「なんだとぉ?じゃ、俺に欠陥があるって言うのかよ! お前が年増だから出来ねーんじゃねーの?」
「なっなんですってーっ!! アンタなんて浮気ばかりしているけど、誰も出来てないじゃない。下手な鉄砲より当たらないのねぇ〜」
「なんだとぉ? おい、コラっ、もう一回言ってみろ」
「えぇ、えぇ、何度でも言ってあげるわよ」
普段は夫婦仲が良いものの、子供の話になると大喧嘩になる。
後継者が欲しいナポレオンは、妹オルスタンの子供を養子に迎え、一時は後継者問題は解決した。
しかし、その子も病で死んでしまい、後継者問題は白紙に戻ってしまったのだ。
が…やがて、後継者問題に終止符は打たれる。
事態は一変する。
ナント、ナポレオンの愛人、ポーランドのマリア・ワレウスカとの間に子供が出来たのである‼︎
つづく