ラノベ「双頭の鷲―ハプスブルク家物語―」
カール6世の悩み⑥
テレーゼ(マリア・テレジア)は元気にスクスクと育っていった。
程なくして帝妃は再び懐妊したが、皇帝夫妻の願いも虚しく生まれたのは、またもや女の子だった。
次こそは…と半ば執念にかられたカールとクリスティーネだったが、それ以降帝妃は懐妊する兆しを見せる事はなかった。
妊活惨敗…。
(げっ、何でこった!ハプスブルク家は呪われているのか⁈ これじゃ、俺の代で取り潰しじゃねーか‼︎ 御先祖様に合わせる顔がねーよぉ〜)
そこでカールは考えた。
(まっ、くよくよ悩んでも仕方がない。レースルが婿を取ればいずれ子供が生まれるだろう。うん、レースルに期待しよう。俺もまだ若い。孫が成人すれはハプスブルク家は安泰さ。
…でも、それ迄生きているかなぁ、俺。万一の事があったら婿を後見人にすれば問題ないだろう。いいや、意地でも生き残って、当家の行く末を見守ってやる!
兎に角、こうなったからには孫に期待しよう!はい、これで解決!めでたし、めでたし。…ってか、俺って頭いい。流石、俺‼︎)と相変わらずポジティブなカールは1人ほくそ笑む。
その横で老公オイゲンが
「陛下、世の中そんなに甘くはありませんぞ」と釘をさす。
(えっ、このジジイ心の中読めるの?)
「えっ、何のことかなぁ~」
「シラを切りおって。王位継承の事だろう。お前の事だ、どうせ安易に考えとるんだろう⁈」
「ちっ違いますよぉ~。継承権の事はよぉく考えていますよ。その時は老公にもご相談申し上げますよし…」
「ふん、この若造が、誤魔化しおって。でも、心して聞けよ。国力とは軍事力じゃ。若が顔を利かせている間はいいが、テレーゼ様の代になったら列強諸国が何を言い出すか分からんぞ」
「うっ…。わ、分かっておる」(くそっ、最近、モウロクしかけてきたと思ったら、このジジイ痛いところを突きやがる)
「特に、プロイセンには注意しておけ」
「プロイセン?ジジイ…じゃなかった老公!フランスではなくて?」
「あぁ、プロイセンはまだまだ叩き上げの後進国だが、あの軍事力を侮るでないぞ。わしは、そう言う意味ではテレーゼ様の結婚相手は隣国バイエルンの公子なら釣り合いが取れると思うがな。バイエルンも王冠を狙っておるでな。隣国との結束を強めておくのもよかろう」
「けっ結婚なんて。わたしの可愛いレースルが結婚なんてまだまだ先ですって。ったく、何を言い出すかと思えば…私の可愛いレースルを何処かの公子にやるなんて…ジジイ、寝言も休み休み言え‼︎…でも…バイエルンねぇ…まぁ、候補に位なら入れてやっても悪くないが…わーっ、何言ってんだ、俺!兎に角、考えておきますっ」
この時のオイゲン公の心配が的中するのは10数年後の事。
カールの突然の死によって、大公女マリア・テレジア…いや、オーストリア・ハプスブルクは未曽有の危機に陥るのである。
カール6世の悩み・完