ラノベ「双頭の鷲―ハプスブルク家物語―」
兄と弟ースペイン系ハプスブルクとオーストリア系ハプスブルク①
「あ“―――っ、もう、 何でなんだよ」
「そうだよ、何で我らがフェルディナント様が東方の僻地ウィーンなんかに行かなきゃいけないんだ!!」
「そうだ!!スペインの継承者はフェルディナント様であって、カールなんて見たことも会った事もねぇ若造の来るところじゃねぇ!!」
「そうだ、そうだ!反対っ、ずぇーーーーったいに反対!」
「帰れ!帰れ!カールは帰れ!皇帝候補だか何だか知らねぇけど、ハプスブルクの思い通りにさせねーぞ」
ここスペインはブルゴスにある宮廷では、反ハプスブルクの大騒ぎとなった。
事の原因は、フィリップとファナの長男カールが成人に達した事を機にスペインの統治をカールにさせる事をマクリミリアンが決定した事にあった。
スペインの宮廷人達が反対するには当然の理由があった。
フランドル生まれのカールは成人するまでフランドルにある宮廷で育てられていた。
かたやフェルディナントはスペイン生まれのスペイン育ち。
スペイン宮廷の扈従達は、フェルディナントの事をカステリア女王イザベラとアラゴン王フェルナンドの唯一の後継者として、目の中に入れても痛くないほど大切に、大切に育てていたのだった。
フェルディナントがここまで愛されていたのは、何もスペインで生まれ育ったからだけでは無い。
兄カールと弟フェルディナントの性質は見事な迄に正反対だった。
兄カールは、何事にも慎重に熟考してから行動を起こす為、鈍重な印象を与えた。
一方、弟のフェルディナントは陽気で闊達な若者だった。
細かい事には拘らず前向きな性格だった。しかし、カトリックの厳格な教育を受けて育った為、自己に厳しかった。
だからと言って、自分の主義主張を他人に押し付ける様な事は決してなく、この颯爽たる若者こそ未来の統治者として、誰もが彼のことを愛していた。
それが、新しい国王が誕生するという段になって、幾ら母親が発狂した為兄弟別々に育てられたとは言え、今まで会った事も見たこともない若者が我が国を統治するとは、スペイン王宮の家臣だけではなく国民も含めて、よそ者に王冠を取られるような気分にだったのだ。
そこへ来て、我が殿さまの御曹司フェルディナントが東方の僻地ウィーンへ赴任し、ハンガリー王女と結婚すると言うではないか!!
王冠を盗られるだけならまだしも(←それだって決して許されざる事ではないが)、可愛い可愛いフェルディナントがスペインからいなくなるかと思うと、やるせなさでいっぱいだ。
とは言え、皇帝(ローマ王)の決定を覆す事は出来ない。
スペイン側はしぶしぶカールの到着を受け入れるしかなかった。
つづく