ラノベ「双頭の鷲―ハプスブルク家物語―」
ハプスブルク再び皇帝となる~虚弱な王フリードリヒ~①
弱小貴族ハプスブルク家の唯一の切り札。
それが神聖ローマ帝国「皇帝」である。
その王冠が他家に移って130年後、再びハプスブルグ家に王冠が戻ってきた。
フリードリヒ・フォン・ハプスブルク、25歳。
選帝侯の目論見通り、純朴で忍耐強さ以外何の取柄も無い男だ。
親から受け継いだ領地はオーストリア南部の僅か3つの州だけ、と言う非常に、ヒジョォ〜に貧しい伯爵だった。
フリードリヒは相当なケチだった。
そのくせ、宝石や美術品、美しい刀剣等には目が無かった彼は、いつも借金に追われていた。
しかも、
優柔不断で臆病者のこの男は、敵が攻めてくると領民より先に荷物を纏めてサッサと逃げ回ると言う君主の風上にもおけない無能な領主で、ウィーンっ子からは蔑まれていたのだった。
「もう二度と同じ轍は踏まないもんねー」
選帝侯達はほくそ笑む。
何故なら、フリードリヒは始祖ルードルフと違い、選帝侯達の目論見通りの男だったからだ。
ただ1つ、選帝侯のアテが外れた事と言えば、この男が誰よりも長生きした事だった。
その為、王冠はハプスブルクの頭上に留まる事になる。
さて、このとても皇帝の器に相応しくない男が皇帝となって10年程経過したある日の事。
ルードルフは一大決心をした。
つづく