南国から来た黒い髪のエキゾチックな少女に対する夫フィリップの興味は一時的で、ブロンドの美しい女官揃いの宮廷では、夫は浮気相手に事欠く事はありませんでした。
一方で、困った事があると家臣や母、姉がいつも何とかしてくれたファナは、異国の宮廷でリーダーシップを取れなかったばかりか、実家からの要請と強欲な夫との板挟みとなった挙句、相次ぐ夫の浮気問題も加わり、ファナの精神は常軌を逸脱して行ったんです
皮肉にも、ファナが母親の呪縛から完全に解き放たれたのは、発狂して完全に自分の世界に閉じこもった後でした。
私達は良きも悪きも、周囲の影響を受けながら成長するものです。
こうすれば相手が喜ぶとか、こう言う場合は黙っていた方がいいなど、知らず知らずの内に、これから起こるであろう反応を意識して、自分はどうしたいのか自分の本心には蓋をしてしまいがちです
この様に、自分以外の人の信念を自分の中に取り込んだまま成長していくんですね。
そして、人生で最初に、一番根強く影響を受けるのが親の信念だと思います。
勿論、それは悪い事ではないのですが、本来の自分が思う事と周囲が良しとする事にズレがあると、とても苦しいものです
それに、子供にとって親は幾つになっても頭が上がらない存在なんですね。
以前、歌手で俳優でもある福山雅治さんが、親がライブに来ると緊張するとおっしゃっていました。
「だって親の前では「カモン!」なんて言わないでしょう」と親の前で、ステージ上の違う自分を見られるのは照れるらしいんです
この感覚、何となく分かりませんか?
親って幾つになっても追い越せない存在で、それだけに子供って、親に見せる顔と友人や恋人、職場やクラス等に見せる顔って違うんですよね。
有難いけれど、ちょっと息苦しいと言うか・・・・いくら血が繋がっていても、家族には夫々個人の人生がある。
分っている様で・・・・でも、心配なあまり干渉してしまったり・・・・中々難しい距離感です。
私も、両親が亡くなった時、淋しいと言う感情の他に、「卒業」と言う感情がありました。
とは言え、親の信念と言うのは中々強くて、今でも完全に解放された訳ではありません。
両親の期待に応えようとか、両親の喜ぶ顔が見たいと思う事はとても素敵な事です
でも、自分の人生は自分のもの。
私達は、自分の人生を生きる為に天から遣わされて来ているんです。
親の概念から外れる事は、一時的に親御さんは淋しい思いをされるかも知れません。
また、子供にとっても親からの分離には葛藤があります。
かのヴィクトリア女王も女王として即位した時、母であるケント公妃から自立する際の葛藤があった位、親からの愛が深ければ深い程葛藤が多いのかも知れません
でも、先ずは子供が自分自身の手で幸せになって、その余力でご両親に幸せのお返しをしてあげられる様になる方が、ずっとずっとご両親も嬉しいと思います。
その為にも、自分の価値観と親や周囲の価値観と切り分ける事が大切なんですね。
それが精神的な自立なのかも知れません