ヴィーニンガー ウィナーホイリゲ2016
あれ?ホイリゲって…昨年、散々、新酒レポートしましたよね?っと思われた方。
今回ご紹介のワインは、2016年。1年熟成した新酒です。
新酒を寝かせると、どうなるかのレポートです。
オーストリアで「ホイリゲ」は2つの意味があります。
1つは食事を提供する造り酒屋と言う意味。
マリア・テレジアと息子のヨーゼフ帝は、葡萄栽培やワイン作りに関する調査を行い、葡萄栽培を活性化させたのですが、特にヨーゼフ帝は、ワイン産業を奨励する為に、全ての人々に自家製のワインと共に食事を通年を問わず、いかなる価格でも提供して良いと言うブッシェンシャンク法を制定したんです。
これが現在のホイリゲに繋がっているのですが、ウィーン郊外を散歩すると、ピクルスやハム・ソーセージ、マリネした魚料理等と共に、ジョッキに入った自家製ワインを出してくれる、パブの様なお店がホイリゲです。
目印にモミの木の枝等を束ねたモノが軒に吊り下げされているのが目印。
民族衣装を身に着けたバイオリンやアコーディオン奏者が郷土民謡を奏で、中には曲に合わせて歌いだす人もいて、何とも楽しい雰囲気。
そして「ホイリゲ」のもう1つの意味は新酒です。
私のワインブログの中でも、ホイリゲは何度もご紹介していますが、オーストリアにも熟成を待って飲むワインもありますが、殆どが長期間の熟成を待たずに、若い内に飲んでしまう早飲み文化なのがオーストリアワインの特徴でもあります。
若い内に飲んでもバランスが良く、果実味が主体で比較的シンプル。
それだけに料理に合わせ易く、素材の旨味を活かす和食との相性も抜群に良いのがオーストリアワインの良いところです。
新酒と言うと日本ではボジョレーヌーヴォーが有名ですが、短期間で色素を抽出する為、じっくりマセラシオンをする期間に欠けてしまう。
当然、熟成期間も見込めませんので、苺キャンディーに代表される第2アロマの香りが主体となり、味わいとしては渋みの殆どないコクに欠ける・・・どちらかと言うと、白ワインに赤ワインの要素が混ざったワインと言う印象になります。
その様な意味では、オーストリアの新酒は、早飲み文化と言う土台もあり、赤ワインより白ワインが多い国ですので、新酒が美味しい。
多分、ヨーロッパのワイン生産国の中で、新酒が一番美味しい国かも知れません。
さて、今回ご紹介するワインは、2016年の「新酒」。
ハッキリいって、既に新酒ではなくなってしまった新酒です。
実は、一昨年の秋、レストラン銀座ハプスブルクさんのソムリエY氏とホイリゲの話をしていたところ、ヴィーニンガーさんがホイリゲを作っているのを知らないとおっしゃっていた為、1本差上げ様と2本購入したところ、勉強熱心な彼は「今年はお店でもヴィーニンガーのホイリゲを用意する事にしました」と申されまして、1本余ってしまったんです。
以前、私がワインを勉強し始めた頃、当時の講師が「ヌーヴォーも1年経てば、普通のワインと同じなので2本購入して、熟成を経た後の違いを楽しむのもいいよ」と言った事を思い出して、1本飲まずに取っておいたと言う訳です。
そして昨シーズンも新酒を楽しく頂きましたので、今回開けて見る事にしました。
因みに、ヴィーニンガーさんはゲミッシュターサッツと言って、数種類の品種を混醸して作るワインでは最高の作り手さん。
昨年の秋にこの「ホイリゲ」を飲んだ時も、他のメーカーさんと比べてバランスも良く、香り・味わい共に1ランク上の仕上がりで、新酒の域を超えていました。
ブログ用の写真を撮る際、既に白い花やライチの様な香りが立上っています。
香りですが、最初は白い花の香りが強いのですが、白桃の香り、次第に柑橘系の香りが出てきます。
が、このワインはいつになく、還元的なミネラルの香りが強い。
フレッシュ感を保つ為に、キャップシールを使用していますが、若く嫌気的な環境下で作られ、瓶詰後キャプシールにて瓶熟されている為、アルミの様な、ヨーグルトの様な還元香が感じられます。
ゲミッシュターサッツなので、フルーツやお花の香りなど、フレッシュながら豊かな香りがバランス良く纏まっている印象。
味わいは、アタックに仄かな甘味を感じると、直ぐに溌剌とした酸が口中に広がります。
味わいのバランスは良いですが、ヴィーニンガーさんの通常のワインに比べると酒質はフラットな感じ。
ただ、ホイリゲ(新酒)と言われなければ、飲み易いワインとしてクピクピいけちゃうワインです。
以前、自宅で1年越したボジョレーヌーヴォーを飲んだ時、ゴムの様な香りを感じた事があります。
新酒は1年置いても、新酒らしい香り(お花やキャンディ等の第2アロマ)はそのまま残りますが、還元的な香りと閉じ込めたまま日数を経過させる為、還元香が強くなる様です。
※我が家は常温なので、そうなるのかも知れませんが。
この香りは時間が経過すると抜けますが、新酒は1年越しても、化ける訳でもない(熟成による香りが出る等)、気軽にサッサと飲むに限る様です。
と言いますのも、新酒は直ぐに飲んでもバランス良く作られているので、1年経ったからと言ってバランスが良くなるとか、赤ワインも、新酒は元々タンニンによる影響が殆どないので渋みが溶け込むとか落ち着くと言う様な熟成による変化はそれ程ありません。
家庭料理全般に合うワイン。
難しい事を考えず気楽に楽しめるのが新酒。
実は、この日、我が家はメニューに困り、茄子やピーマンとイカを炒め、お味噌、みりん、お酒(同量の割合)で絡めたのですが、そんな甘辛な和のお惣菜ともOK。
この様なワインには合いそうもないと思える料理にも合わせる事が出来るのが、カジュアルクラスのオーストリアワインの良いところです。
新酒らしく淡い色合いです
2016年・・・・なんだか、すごく前の様な気がします。