シャンパーニュは何時、何処で飲んでも楽しいお酒だと思う
食事以外でも、昼間、テラスでおしゃべりを楽しみながら飲んでも良し、コンサートやバレエ・オペラ等の幕間に飲むのも華を添えるものです
以前、銀座のFoxeyにカクテルドレスを見に行ったら、偶然お店の記念日だった様で、シャンパーニュとフィンガーフードを出された事がありましたが、アスコット競馬やモナコのF1グランプリ等の社交の席でもシャンパーニュはゴージャスな気分を盛り上げてくれるスペシャルアイテムです
映画「ミッション・インポッシブル」にクリスチャン・ディオールが協賛しており、友人がディオール(お化粧品の方ですが)に勤めていた関係で、試写会にお邪魔させて頂いた事がありますが、ウェルカムドリンクとしてシャンパーニュが供されると言う洒落た演出に、思わず友人に「うちの会社とは全然違うっ!」と羨ましがった事があります
シャンパーニュは日常の何気ない空間を、非日常に変える特別なアイテムなのかも知れません。
ところでシャンパーニュの楽しみは、味だけではありません。
確かにその製法やメゾン毎の味わい等シャンパーニュの楽しみは奥深いのですが、そんな面倒な事を知らなくても、ある器官を使って、誰もが楽しむ事が出来ます
それが目と耳
特に耳で楽しむ事が出来るのは、ワインの中でも、シャンパーニュ(を含むスパークリングワイン)だけです。
耳?と思われるかも知れませんが、シャンパーニュはグラスを耳に近づけると、泡が当たるので、途切れなく高音の綺麗な音が聞こえるんです。
クリスタルでも鉛の含有量が高い程、綺麗な音を奏でるんですよ。
さて、ワインやお食事とくれば、切っても切れないのが音楽。
私にとって、シャンパーニュはモーツアルトのイメージです。
モーツアルトの曲は天上でコロコロと音が奏でられている印象です。
絶え間なく音が湧き出る様なスタイルが、グラスに当たるシャンパーニュの音やコルドン(帯とか襷、リボンの意味)と呼ばれる絶えず立ち上がる泡や、水面に連なる泡とイメージが重なりませんか?
特に、ピアノ曲や魔笛の中で歌われるアリア等はピッタリです。
モーツアルトはご存知の様に、幼少の頃、宮廷から宮廷へと演奏旅行をしていました。
時は、バロック文化が終わりロココの文化が開花した頃。
幼いモーツアルトの目には、貴婦人達の真珠が転がる様なさんざめく笑い声や、王宮の煌めくシャンデリア、鏡の中で歪んで揺らめくローソクの明かり、金糸銀糸の刺繍や宝石を縫込んだ服を着た貴族達が鮮明に焼き付けられ、貴婦人達が扇を振る度に、髪につけた髪粉や貴婦人達の白粉の香りが漂った事でしょう。
そんな甘美な非日常の世界に身を置いたモーツアルト。
王宮とはその時代の最高の物が集まるところです。
幼い頃目にした、キラキラとした王侯貴族の世界が根底にあるからこそ、あのこぼれる様な旋律を生み出したのではないかとさえ思うのです
実生活では浪費家と言う負の要素を背負いましたが、作曲家としては天賦の才能に、宮廷文化の華やかさや繊細さを与えたのではないでしょうか。
モーツアルトの天上から降り注ぐ様な音楽を聴く度に、幼い頃のモーツアルトが、シャンデリアの光に照らされた、神々の世界を描いた宮廷の天井画を見上げている姿を、私は想像してしまうんです。
テナーが大好きな私は、テノールにはバローロが、そして、シャンパーニュにはモーツアルトが良く似合うと思うのですが、皆さんは如何でしょうか?