『ちょっ…高野!!』

安達の制止を振り切りあたしは院内を駆け出す。

行き先?そんなの知らない。

あたしは叫び出したい気分を必死で抑えた。

汗をぬぐうのも忘れ、必死で駆けた。

情けなかった。簡単に「死にたい」なんて口に出して。まだ何にも"始まっていない"のに。

逆に消えてしまいたくなった。恥ずかしさと申し訳なさでいっぱいで。と、考えていたら鼻にきた。鼻の奥がキュンと痛くなる感覚。

涙が出た。

あたしってこんなに泣き虫だったっけ?

いつも冷静で通っていなかったっけ?

もういい。考えるのはやめよう。今は…感情に身を任せよう。

ふう、と一つため息をついて、感情を絞り出すように泣いた。


ペタペタと響く足音。たぶんアイツだろう。あたしは顔をゴシゴシとぬぐって、その足音の方へ歩み寄った。

『おまっ…心配…した…ぞ…』

ハァハァと肩で息をしながら、切々に安達が言う。

「ごめん」と言いながら、あたしは笑ってしまう。

『なに笑ってんのよ』と軽く頭を叩かれる。

「だって、そんなマジな安達を見たことないし」

『…俺もそんなアクティブな高野を見たことねえな』

二人で笑う声が、静かな院内に響き、通りすがりの看護師ににらまれる。

二人で頭を下げ、小さく笑う。


病院をあとにして、大声で笑う。

『絶対にあの看護師に顔を覚えられたよなー。これからもお見舞いに、行かなきゃならないのにさ』

「ごめんごめん」

『なあ、もうあんなこと言わないって約束してくれないか?』

「自信ないなあ…。自信ないから、ずっとそばにいて見守ってくれる?あたしらしくいられるように」

顔を赤くして、下を向くクセは変わらないね。


あたし、ずっと"普通"はダメだって思ってた。

でも世界は"普通"の人で、造られているんだね。

そして何もなかった二人が見つけるんだ…始まりの場所。