歌を失くしたカナリアは、どこへ飛ぶのか。楽しかった思い出と共に叩きつける様に叫ぶのは、あの日々とは違う破滅の歌。


…マスター…ルーシェ…私はもう戻れないの。だから、最後に…。


首から下げたロザリオをキツく握り締め、数千とも数万ともいえない鎧兜に身を包んだ軍勢に一人立ち向かう。

はるか彼方、地平線を埋め尽くす様な人の波に逆らい、叫び続ける。






ここは、調和と平和の国、パラメデイア。待望の皇子が生まれたのは今から丁度15年前。それは王妃の命と引替に誕生した。


「ルーセント、ルーセントはいるか?」

荘厳で少し嗄れた威厳のある声で、僕を呼ぶ声がする。

「はい、私はここに。」

感情を一つとして込めない声で、まるで機械の様に応える。

「ここにいたか。相も変わらず、お前はしかめっ面をしているな。もう少し笑ってみてはどうだ?ん?」

「必要のないことはする必然性がありませんので。ただ、それが王の言葉なら、善処いたしますが。…用事はそれだけでしょうか。」

淡々と言い放った僕に少しだけ悲しい顔をして、わざとらしく溜息をつく王…いや、この場合父と呼んだ方がいいのだろうが。

「どうしてそんな可愛げなく育ってしまったのか。ミフィールはあんなに可憐で、明るくて気だても良くて…」

軽く回想モードに入ってしまった父を横目に、僕の心はまた閉じていく。

城の皆が言うんだ。ミフィール王妃…実感なんてこれっぽっちもないけれど、生物学上、僕の母は、この国の太陽みたいな存在だったって。

僕は、その太陽を奪って出来た存在。

そんな僕がどんな風に笑えばいい?どうすれば許してもらえる?僕の存在、それ自体が罪であるというのに。

暗く塞ぎこむ僕に、回想モードからやっと抜け出した父が告げる。

「今日はお前にプレゼントがあるんだ。驚くなよ?ロストテクノロジーの粋を集めて造られた機械人形(モビードール)だ‼」

ロストテクノロジィ?モビードール?耳慣れない単語の羅列に、頭の中はちんぷんかんぷんだけど、せっかく格好良く決めた父の言葉に、水を差すのも憚られるため、僕は黙って父を見ていた。


扉を押し開けて入ってきたのは、女性というには幼く、少女と呼ぶには少し大人びた顔立ちをしていて、年の頃はちょうど僕と同じくらいだろうか。

それには、表情と呼べるものは何もなく、ただそこに顔というパーツだけが並んでいて、機械人形とはよく言ったものだと感心した。その肌は透ける様に白く、赤いドレスとの対比がより…綺麗に見えたんだ。

「ハジメマシテ、マスタールーセント様」

感情もなく、淡々と紡ぎ出されたそれはまるで鏡のようで、自分を見ている感覚に陥った。

「は…はじめまして。」

恐る恐る差し出した手に、触れた瞬間体温がないことに気付く。こんなにも質感があり、まるで人間の様であっても機械は機械でしかないということか。

一人、勝手に納得をし、握り返されるわけもない手をほどいて、父を睨む。

「王よ、そして私めにこのオモチャをどうしろと言うのでしょうか?感情のない機械と、感情の乏しい人間と似た者同士仲良くしろとでも⁈」

「ルーセント‼」珍しく声を荒げ、振り上げられたその手は、振り下ろされることはなく、機械人形の細腕で受け止められていた。

「マスターを守るのは、あたしの義務。たとえ、それが誰であろうとも。」

「やめてくれ‼とんだ茶番劇だ‼媚を売れば僕が君に心を開くとでも?女に守られる弱虫王子と噂が立つ前に、私はこれで失礼させてもらう‼」

開け放された扉を横切り、自室へと転がりこんで誰も入れないようにと、キツく施錠した。


幾度となく、扉を叩く音が聞こえるが、開かないとみると諦めたのか、次第に音が聞こえなくなった。

「なんだか今日は疲れたな…」

無理も無い。忘れたはずの感情が、表面に出ているのだから。他人に関心を持たず、その代わり誰も入れずに生きてきたのに、溢れ出す生々しい感情はきっとそれは、疲れるものだったでしょう。


迫り来る眠りの波に身をまかせて、ぼくは意識を手離した。


意識と無意識の狭間、夢と現の境目で、薄く、ごく限りなく薄く聞こえてくるのは子守唄。

母がいなくても、その歌声はどこか郷愁を誘う。幼き頃に聴いた、乳母の背で。

「どうして僕にはママがいないの?」

わかり切った質問がしたいのではなく、困らせたいわけでもなく、ただ純粋に心の奥から呼ぶ声に、一筋の涙が零れ落ちた。
「相合い傘ってさ、好きな人の方が濡れるんだってさ」

そんな風に無邪気に笑う君のことなんか思い出して。きっとあの日の僕らは、同じぐらい肩が濡れていただろうね。今は…僕の頬だけがずぶ濡れだけど。

いつ、どこで、どんな様に道を外したなんて何の意味もないことで。巻き戻らない時間は僕を一人置き去りにして進んで行く…君と同じようにね。

「あなたにはもっと別のいい人がいるよ」まるで預言者の様に告げられたあの時から、僕の時間は止まってしまって、君だけは前を向いて進んで行って。その縮まらない隙間を僕はどうやって埋めたらいいのか、全くわからないんだ。だって僕が欲しいのは、別の誰かじゃなくて、君からの愛情だけだから。

溢れるほど貰った思い出も、この愛情も捨てる場所さえ見つからないよ。他の誰かにあげられるものでもないし。

街を一人歩いても、まるでモノクローム、白黒の世界。そしてとまらないフラッシュバック。場所、色、匂い。僕が一つ動くたびに、反応するリアクション。それがまだ胸の奥を刺激するんだ。

「友達には戻れないの?もう二度と会えないの?君のこれからに僕の居場所はないの?」

あの日、言えなかった言葉たちが頭の中を回り続けるけど、結果なんてわかりすぎるほどわかっていて。君に辛い選択をさせてしまったのは、きっと僕の弱さと自己愛にすぎなくて。

だけど、最後にひとことだけ伝えさせてよ。


「…ずっと待つよ」


リアクションがもらえるその日まで。
趣味の合わない音楽を爆音で聞かされるのは、俺にとって拷問に近いから、そっとイヤホンで耳を塞いでみたけど、全く聞こえないくらいの音量でした( ´Д`)y━・~~

ドライブっていうか車内ってさ、かなり距離感は近いし、会話とか音楽とかセンスがわかるじゃない?

そこで不快感やストレスを感じないとすれば、それはきっと好きなんじゃないのかな。

なんだかふとそんなこと思ったよ。

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