『…どうして食べないの?』

本当のことを言っていいんだろうか?

…ダメだ。いらない心配をかけたくない。…この人たちには言えない。

僕が黙って下を向いていると、サオリさんから平手打ちが飛んできた。

頬がジンジンとする。

「何するんですか!?」

『何するんですか?じゃないわよ!!あんたねぇ、どれだけあたしたちが心配したと思ってるのよ!!』彼女の目から涙が溢れていた。

『とりあえず落ち着け、サオリもリョウも、な?』

アツさんに言われるとなぜか落ち着く。懐の深さなのか、優しいからなのかわからないけど。

『…少年。マジメな話な、メシ食ってるのか?食ってないだろ?』

「はい」

『それはよくないぞ。あのな、付き合いは短いかも知れないけれど、俺も、サオリも、リョウのことは友だちだと思ってる。お前が悩んでるのはわかってる。言えないなら言えないでかまわん。…だけど、心配くらいしちゃダメか?』

アツさんがゆっくりと噛みしめるように、言葉を紡ぐ。

僕は申し訳ない気持ちでいっぱいになった。

「ごめんなさい」

次から次へと流れる涙を、僕は袖で拭った。

『辛かったな、少年。…食おうぜ?』

アツさんが優しく頭を叩く。

「はい」

『お前もいつまでも泣くな』

『泣いてないわよ!!』

『お~怖っ。早く食えよ』

本当にこの人は優しい。温かい。

僕らは食事を食べ終え、ドリンクを注文する。

久しぶりの食事に、少し胃がびっくりしていた。

ドリンクを一口飲み、僕はポツリと口を開いた。

「迷惑かけてすいませんでした」

二人とも優しい顔で頷いている。

「実は、1ヶ月前くらいに別れかけたんです。会いたい気持ちが大きくなりすぎて。その時に"自分さえ我慢すればいいんだ"って思うようになって。別れるのが怖いから、気づいたら合わせるようになっていて…」

『そんなことがあったんだ…。それで?』

「わからないけど、あまりメシを食べられなくなりました」

『そうか…。それが正しいとか、間違ってるとか俺は言えないし、わからないけど、メシは食え。俺はそれだけしか言えんな』

「わかりました」

会計を終え、外に出る。


『リョウ…ちょっとうちに寄らない?』

「…いいんですか?」

『うん。ちょっとあたしも話したくて』

「わかりました」

『じゃあ先帰るわ。ちゃんと食えよ』

笑顔で手を上げるアツさんと別れ、家に向かった。