京鋏徹底研究 抉る 10

13年前の鋏、、、東日本地震前の鋏です。

 

今回カスタマイズしてみました。

 

自分の手に合った鋏に、、、

 

沢山ある多くの鋏の中からイイ鋏を選ぶから、さらに自身の手に合う鋏にするには、、、

 

少なからずとも自分の手に合う様に加工してみる事だと思います。

 

鋏の目的、、、何を一体どの様に切るのか?その対象物によってその鋏の良し悪しが判断できる。

 

其々にその鋏が持つ能力はどうか、適選な切断径は何㎜なのか。鋏の使い方次第では刃を痛める事もある。

 

なので、、、其の鋏の癖を得るには、いち早く手にして多くの情報を得ることが肝心です。

 

今回は坪田金物店で出会った二代目さんの鋏、それも代替わり初期の鋏事情から手に合う加工をしてみました。

 

ずいぶん昔、、、あれは東日本大震災前の頃の事、暫く足が向いていなかた東山の金物店で出会った鋏を見ていると、、、

 

奥から「それ息子のやっちゃ」と牛乳瓶の底の様なメガネを掛けたいつものオヤジ、、、

 

ドヤ、頑張ってるやろ、と、、、

 

抉ると硬そうな刃、奥でも先でもいける…手に馴染むが、、、

 

妙な曲がりとクセがある。

 

それが第一印象

 

もう一丁隣のカゴには刀鍛治の鋏…..

「それ、刀鍛冶が作った鋏やで」…..

…..失礼ながらそれはおよそ鋏を知らない者が買う鋏。

繰り返しますが….. 恐ろしいまでの刃を持つが鋏としての道具になっていない。

一体どのくらい売れたのだろうか?残念ながら…..画像は無い。

 

こうして昔の鋏についてこのブログに記すのもずいぶん久し振りになります。

 

奇しくも事務所移転でコレクション整理を兼ねて改めて握ると当時の自身とまた異なる事に気がつく。

 

それは何故この形に至ったのだろうか?いい機会なのでこの際振り返ってみたい。

 

今年3月に書いたブログ

京鋏徹底研究 尻合わせ

2024-03-02 11:40:02

 

そこで幾つかの尻合わせの為の捻りについて調べていた時に気づいたこと、、、

 

そもそも、尻合わせの捻りはあっているが、、、右手太陽丘部分のふくらみが普通ではない。

 

抉ると云う動作は右利きの場合、ツル手鋏(輪鋏)は親指太陽丘は押し、人差し指より小指に掛けては引く作用で抉る動作となる。

 

なので一際、抉りが強くて刃への負担がかかり過ぎてしまう。つまりこじらなくても閉じるだけで切れる構造になっている。

 

抉るというより、握ると切れる、、、

 

つまり、切れ過ぎるほど切れる、、、

 

当時、何故この様な形状にしたのか?不思議でならなかった。通常であれば先代の形状を学(真似ぶ)事で済むところ、、、

 

そこで全くの想像となるが、、、

 

多分こうだったんじゃね?劇場

っぽく書くと、、、

 

おそらく、修理の依頼はかなりの数は来てたはず、これについては自身も修理依頼して聞いていた。

先ず、刃つくりに関しては、敢えていえば「硬いと軟い」はわかりますが、自身に経験もなくわからない部分が多すぎます。

 

京鋏のつくり(構造と形状)は独特です。

 

芯がねは丸棒でガタガタに緩くて一回転、細かくても荒くも使える万能鋏、独特の胴形状はその土地ならではの鋏へと育まれた。

 

初めてその槌を握り、、、祀り上げられた先代の壁、超えに越されぬ、、、何とやら、、、^ ^

 

沸、温度、粘り、自身が手探りで独自に得るしかない。

 

形状もまた手探り、京鋏が何故一回転するのか?そんなモノは普通の人とってはどうでもいい事、、、

 

しかし、つくり手とつかい手にとっては大事な問題。

 

いじりに、いじり倒して叩き戻す。生き物の様な鉄、、、ここを叩くと、ここがこうなる?の繰り返し。

 

だから失敗が次の糧となって、失敗が失敗でなくなる度、叩き込むという形成姿勢を繰り返すはず。

 

そして鋏作りの中で、刃つくりと形状課題は永遠の課題のはず。

 

先代の鋏の成り立ちを解くために、芯がねを外し、削り研ぎ、幾つも幾度も打ち上げて一つ一つの結果となる。

そして結果的に打ち当たりの尻合わせはあっているものの、握りの大きくはらんだ腹と逆反り。

 

これは、、、何の為の膨らみだろう?

なるほど、手に馴染む形、、、

あっ、回転も解消するよね。

 

その為、わずかな抉る力で切断に至る逆張り。しかし、、、それは二つの刃がせり合う硬度バランスが要求される。

刃鋼の軟硬は戻しの温度とタイミングによって異なる。しかも抉りが強いと喰い合い、逃しの体勢と硬い鋼が要求される。

 

逆に粘りある鋼には、喰い合いを逃がす捻れが要求されるはず、、、

 

なのでそれら狭間の苦悩が、つくりあげた鋏に自身を映す形として現れてしまうのかもしれない。

 

これはある意味戒めとしての刀鍛冶の逸話が残っている、、、

https://xtech.nikkei.com/.../COLUMN/20081002/159019/...

 

ある刀匠は焼入れ時の水の温度が秘伝だった。弟子入りした彼の息子にも教えようとしない。

ところが、その温度を知りたい、と切望する息子を差し置いて、刀匠は、ある人物にその秘伝を教えてしまった。

ならば自分もと、息子が、焼入れ用の水槽に自らの腕を入れた。

とたん、その腕を師匠である父親が、自作の刀で切り落としてしまった。

例え息子とはいえ、門外不出の事、あるまじき行為を戒めた逸話として語り継がれている。

 

逸話焼入れの温度と同じく、岩組み一つとっても配置と間、据え付けと根張り、気勢のコントロール、其のほか整姿と剪定に於ける密度と配分、、、

 

と、いとまがないが、其の見極めとタイミングは真似て如何になるものではなく、全ては独自に開発するしか方法はない。

 

それは、3代続く植木屋の自身でも、似て非になるモノ、、、似ている様で似ていない。

 

受け継ぐモノは先代からの資質のみ、そもそも手が違う。つまり同じモノは決してできない。

 

能力は決して遺伝しない。

 

だからこそ、貴重なのだ。そして次世代は、先代を超える勢いで創意工夫に励む。

 

当時手にした自身には、、、上記にある様な分析も打ち手に立った思考や苦慮苦悩の思慮なく手にしていたが、、、

 

京鋏は今までにない構造が満載です。

 

芯がね丸棒も異端、胴長もある意味では異端、しかも芯がねが緩く回転するのも異端。

 

大阪河内長野、鋏鍛治「水落」讃岐親方曰く「答えは常に現場にある」と、、、

 

新たな仕組みや形状開発に意欲は大切、しかし半可な要求に応える危険性も否めないとも、、、

 

要求と追求の狭間で独自の形状姿勢が現在の鋏を表現しているのかもしれません。

 

しかし、、、ここまでのお話しは、あくまでも自身の妄想、「京鋏それから、、、」の大妄想。

 

ということで、既存の芯金を外し芯金を六角ネジに変えて、膨らみと反りを通常にだましだまし打ち戻してみました。

 

さてさて、、、それでは捻れを延ばしたリメイク後がどうなったのかは…..、

 

またこの次のお話しとしましょう。