ロケット軍の粛清と台湾有事の行方 | 日記「ウクライナ人の戦い」 Masanori Yamato

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「ウクライナ戦争」を描くことで、プーチンとは何者なのかを書きたい。

 

ロケット軍の粛清と台湾有事の行方  2024/1/6 18:00

 

このタイトルは2024/1/6の石平さん恒例の土曜日のYoutube動画から拝借した。以下の内容も動画から教示を受け引用したものである。

 

この日の石平さんのポイントは、12/31に公表された習近平の2024年元旦のあいさつの中にあった「祖国統一は歴史の必然である」という一文に考察を加えたものである。結論からいうと、習近平はこの先数年は武力で以って台湾を制圧することを決断しないだろうと推測しているのである。その根拠を以下のように解説している。

 

12/29、「第14次全人代常務委員会」は9名の軍高官について全人代代表委員の資格をはく奪する決定を行った。免職に留まらず取り調べを受けているものと思われ、あるいは収監されているかもしれない。

 

内5名はロケット軍関係者である。李玉超前司令官、李伝広前副司令官、呂広前装備部長、周亜寧元司令官、張振中元司令官。ここに、解放軍の装備を担当する張育林装備発展副部長、ぎょう(食片に尭)文敏副部長が加わるのである。

 

以上に加えて、さらに12/27の「全国政治協商会議」は中国兵器工業集団公司会長と中国航天科学技術集団公司の両名を罷免し、委員会委員の資格を剝奪している。

 

これらの人事の4か月前、国防大臣の李尚福が更迭されている。李尚福は2022/9まで装備発展部長を務めていた。その後、中国共産党中央軍事委員会委員を務めて、2023/3から国防大臣となっていた。李尚福の更迭は2023/9である。

 

これら一連のロケット軍関係者の粛清を、石平さんはペロシ下院議長の台湾訪問(2022/8/2~3)に関連して、8/4のロケット軍ミサイル実弾射撃訓練の失敗に起因すると見ている。

 

ペロシ会員議長は立法院で台湾支援の演説を終えて8/3深夜に台湾を離れた。翌4日から解放軍ロケット軍は台湾周辺の海域にミサイルを撃ち込んだ。この実弾演習の海域は8/2の時点で公表されていた。

 

演習は4日予定通り開始された。計11発(日本側発表では9発)が発射された。しかし、1時間23分後には終了した。ロケット軍は

「訓練任務は円満に完遂できた」

と発表し、海域の立ち入り禁止を解除した。なぜか?

 

それは、5発のミサイル弾が日本のEEZ内に着弾したことで、日本から即座の抗議を受けたからである。

 

ミサイル実弾訓練の結果が問われたのである。中国軍のミサイルの性能の実態が明らかになったから。正確性の未熟が明らかになった。ミサイル製造部門である装備発展部の能力の低さが顕わになり、ロケット軍幹部と装備発展部との間の癒着と腐敗が疑われたのである。

 

軍と装備発展部の腐敗は一人ロケット軍に留まらないだろう。人民解放軍の各装備に性能の質的問題を抱えているだろうと推測される。かかる軍装備の質的問題の解決には相当の年数を要するに違いない。

 

かかるいきさつの経緯を踏まえての、12/31の習近平の新年の祝賀における「祖国統一は歴史の必然である」ということばにつながっている。石平さんはそう考察する。普通なら「我々はいかなる手段を用いても祖国の統一を推進する」というような強い語調で表現してもいいところであるのに、さも学者が語るような「祖国の統一は歴史の必然である」ということばで祝辞を飾った。その裏には、今の中国解放軍の軍事力ではとうていアメリカ軍と日本軍には勝てないという読みがあってのことだろうと推測するのである。

 

写真は8/2中国軍発表の訓練海域図(朝日新聞2022/8/2デジタル版から)