ここ最近の多忙により、なかなか更新できておらず、申し訳ありません。

 

現在問題になっている広島市中央図書館(以下「中央図書館」という)・広島市こども図書館(以下「こども図書館」という)・広島市映像文化ライブラリー(以下「映像文化ライブラリー」という)の移転問題。

エールエールA館への移転についての問題点は、以前にもこのブログにまとめていますので、そちらをご覧ください。

 

 

 

 

 

各局から報道があっている通り、こども図書館についてはエールエールA館への移転を撤回し、現地で耐震などの改修を施すという方針が発表されました。さまざまなところからは、「市民の努力のおかげ」「ひとまず安心」といった喜びの声も上がっています。

 

しかしながら、我々「広島文学資料保全の会」「広島花幻忌の会」「赤い鳥の会」は、「こども図書館の移転を考える市民の会」と一緒に、「広島市立中央図書館」「広島市映像文化ライブラリー」「広島市こども図書館」の3つ全てを「基幹図書館群」として中央公園内に建て替える旨の要望書を新たに提出し、記者会見も行いました。

 

 

 

 

 

 

ほぼ全ての報道関係者が報道したのは、「とにかく、3つを中央公園内に立て替えてほしい」というところのみ。

特に大事なところについては、全く報じられていません。

 

 

 

Ⅰ. 今回の要望

今回要望をしたのは、次の4つ。

 

  1. 「広島市立中央図書館」「広島市映像文化ライブラリー」「広島市こども図書館」は、「基幹図書館群」として、平和文化都市にふさわしく、緑ゆたかな中央公園内での建て替えを望みます。
  2. 「広島市こども図書館」は「基幹図書館群」の独立した構成館として、100年後の子どもたちにも誇ることのできる、創設当時の志を受け継ぐ広島ならではの子ども専門図書館として、ハード、ソフトともに、拡充整備してください。
  3. 図書館群の再整備にあたっては、令和4年2月定例会で可決された決議案第53号を尊重し、既存の協議会等を利用するのではなく、この問題に特化した専門的な審議会を早急に設置し、市民・有識者をはじめとする多くの人の意見に耳を傾け、時間をかけて議論を深めてください。関係者への説明責任も果たしてください。
  4. そのためには、「12月初旬に再整備方針を固め、2022年度中に整備地を決める」というスケジュールの延期を求めます。

 

報道がされているのは、このうち1つ目と2つ目の項目のみです。

 

 

 

Ⅱ. 広島市の基幹図書館群

基幹図書館群とは、広島市立中央図書館、広島市映像文化ライブラリー、広島市こども図書館の 3 館のことです。

 

中央図書館は、『浅野図書館』から歴史が始まっています。

 

1920年、広島藩最後の藩主である浅野長勲は、広島城入城300年を記念して図書館を設立することを発表しました。その6年後、市内小町(現在の中区袋町)に『浅野図書館』が竣工しました。

 

1945年8月6日、原子爆弾投下によって、原爆により焼失(疎開の貴重書を除く)、職員も15名のうち4名死亡と、壊滅的な状況となったわけですが、その翌年には比治山にある頼山陽文徳殿で図書館業務を再開、1949年6月には小町に復帰開館し、その1ヶ月後には、現在のこども図書館の前身となる広島市立児童図書館も浅野図書館内に併設開館しました(この児童図書館は1954年4月、基町の現在地に竣工した施設に移転しています)。

 

1955年2月、初代建物の所在地に近い国泰寺町に移転しました。現在、広島市役所議会棟があるあたりです。

しかし、10年後には急速な都市化による騒音問題なども発生し、視点せざるを得なくなりました。この際、浅野家関係者の「広島城に近い場所にしてほしい」という意向もあり、現在の中央公園内に移転することとなり、1974 年10月、『広島市立中央図書館』に改称し、再オープンしました。

 

広島市中央図書館は、分館となる各区図書館(中区図書館、東区図書館、南区図書館、西区図書館、安佐南区図書館、安佐北区図書館、安芸区図書館、佐伯区図書館の8館)、こども図書館、まんが図書館、公民館図書コーナー等の中枢館として、資料管理、貸出サービスを支えるコンピューターシステム、全館に資料を提供する運営管理を行っています。移動図書館「ともはと号」では図書館や公民館が利用しにくい地域の支援も行っています。約120万冊の蔵書もあり、市民の高度な学習・研究への支援を行っています。中央図書館の果たすべき役割は、地域文化の継承と発展を目指し、長年蓄積された広島に関わる多様な資料を継続的に収集・保存し、後世につなぐべく保存に最大限努めることです。

 

(広島市図書館要覧より)

 

 

そして、映像文化ライブラリーですが、1982年5月、地方自治体としては初めて、都市環境の整備に伴った文化都市実現の一環として、開館しました。映像文化の普及・振興・発展に寄与するため、日本映画等の収集・保存・上映、レコード・CDなどの音楽資料を収集・保存する専門施設であり、広島市立中央図書館の複合施設となっています。当然のことですが、ただの「古い映画や映像作品を上映する映画館」ではありません。

 

 

 

Ⅲ. 広島文学資料室

1987年、「広島に文学館を設立しよう!」と願う多くの文化人や研究者、市民が集まり「広島文学資料保全の会」が設立されました。文学館を要求する署名運動も行い、荒木武市長(当時)に提出しました。「当面は中央図書館を活用する」との市長の一言で、「広島資料室」の奥の一角に「広島文学資料室」が設置されました。

21人の文学者についての簡単な説明パネルを設置し、代表的な作品を展示しています。しかし、「広島文学資料室」が設置されてから35年が経っており、この35年の間にも、素晴らしい文学者はたくさん出ているにも関わらず、拡充なんかもなされておらず、一切更新されていません。

これらは、その「広島文学資料室」の中を撮影したものです。

 

これだけで十分といえるのでしょうか。

 

 

 

Ⅳ. 一切報道されていない現状

こんな「広島文学資料室」の拡充も踏まえて、これまで要望書や請願書を提出してきています。その度に記者会見を行うなどしていますが、発表をしても一切報道されていない問題点が数多くあります。

 

①付帯決議はどうなってるの?

今回の要望内容の3つ目は、「図書館群の再整備にあたっては、令和4年2月定例会で可決された決議案第53号を尊重し、既存の協議会等を利用するのではなく、この問題に特化した専門的な審議会を早急に設置し、市民・有識者をはじめとする多くの人の意見に耳を傾け、時間をかけて議論を深めてください。関係者への説明責任も果たしてください。」となっています。

令和4年2月定例会で可決された決議案第53号は、令和4年度広島市一般会計予算に対する付帯決議となっており、次の3つが定められています。

 

  1. 議会・利用者・有識者などの関係者から広く図書館の再整備について意見を聞いた上で、中央図書館等に求められる機能等を盛り込んだ、図書館整備方針を作成すること。
  2. 図書館整備方針の作成後に、現地建て替え、中央公園内等での移転、エールエールA館への移転、それぞれを詳細に比較検討できる資料を作成して、各資料について議会・利用者・有識者などの関係者に丁寧に説明し、理解していただいた上で、移転先などを決定すること。
  3. 基本設計・実施設計の各段階についても、議会・利用者・有識者などの関係者の意見を広く取り入れていくこと。

 

2022年7月15日、「広島文学資料保全の会」「花幻忌の会」「赤い鳥の会」の3団体は、やっと市長と面談を行いました。これまでも何度も何度も面談の要望を出してきていました。最初に要望を出したのは3月。4ヶ月越しにようやく叶ったものでした。

しかし、実際はマスコミ関係者の同席は一切認められず、面談の大半は市長が自らの意見を述べる時間となり、我々の要望をしっかり説明できずに終わりました。市長の行事を記録した『日々の動静』にも、この面談の記載はなく、面談はなかったことにされています。付帯決議の1項目目にはっきりと「議会・利用者・有識者などの関係者から広く図書館の再整備について意見を聞いた上で」と書かれているにもかかわらずです。

つまりこれは、付帯決議の1項目目すらも守られていないということです。

 

今回、要望書を生涯学習課の田尾課長に提出した際、田尾課長は「十分協議は行なったと認識している」と話していましたが、我々は十分な協議を行なったという認識は一切ありません。確かに、田尾課長には、「広島文学資料室」について、どのような場所なのか、どういった経緯で設置したのか、何が必要なのかなどについての説明をさせていただきました。しかし、これはあくまで説明をしたわけであって、協議ではない(「協議」とは、話し合うことです。説明を聞くだけでは、「協議」とは言いません。)にもかかわらず、市側はこれを「協議をした」と認識しているわけです。

 

②スケジュールは大丈夫?

「12月初旬に再整備方針を固め、2022年度中に整備地を決める」という流れが知らされていますが、前述のように十分な協議すらもできていない中、12月初旬には方針を固めて来年3月中には整備地を決めるというスケジュールはあまりにも時間がなさすぎるのではないでしょうか。

 

広島の文化を発信する拠点ともなる図書館のことです。

図書館の重要な機能としては、大きく

  1. 図書館資料の収集
  2. 図書館資料の整理
  3. 図書館資料の保存
  4. 図書館資料の提供
  5. 集会活動、行事の実施
  6. 資料及び図書館利用に関する指導

の6つがありますが、その中でも重要な役割として「資料の保存・管理」があるわけです。この保存・管理ができていない時点で「本の貸し借り」をしたり調べたりといったことは一切できません。

 

膨大な数の貴重な資料を保存・管理する重要な施設を、市民からの税金を使って整備するわけです。今のままで「とにかく間に合わせるために早く」決定させてしまうと、後からいろんなボロが発覚し、それを潰していくことになりかねません。そうなれば、余計に莫大な費用が必要となり、時間もかかるようになるのは当然です。

 

③こども図書館はどうなるの?

こども図書館については、現地での改修の方針となり、喜びの声も上がっていますが、実際はどうでしょうか。
こども図書館は前述の通り、広島市の基幹図書館群の1つです。つまり、中央図書館・こども図書館・映像文化ライブラリーが一箇所に集まっているのが当たり前です。
 
それなのに、こども図書館を切り離して、こども図書館だけを現地で建て替えというのは、どうなんでしょうか。
現地で建て替えるのであれば、中央図書館と映像文化ライブラリーも現地で建て替えるのが筋ではないでしょうか。
 

③結局はエールエールA館ありき?

この図書館移転問題に限ったことではありませんが、僕の個人的な感覚としては、まったくもって理解できないことが起こっています。

図書館移転問題もこれが大きく関わっているのですが、広島には随分昔から「天下り」ということが行われており、それが当たり前になっています。

 

大阪では、天下りがあまりにも酷く、それによる不祥事も相次いでいたこともあり、条例の中で外郭団体等への再就職の禁止を定めており、再就職禁止団体もリストとしてまとめられています。

https://www.city.osaka.lg.jp/somu/cmsfiles/contents/0000175/175481/syokuinkihonjoureiR020930.pdf

https://www.city.osaka.lg.jp/somu/cmsfiles/contents/0000171/171445/ichiran221003.pdf

 

しかし、広島ではこのような条例もなく、天下りは当たり前であり、市議会議員すらも問題だという認識は一切ないというのが現状です。

 

今回の図書館移転問題に限定すると、

広島市行政機構図としては、市長の下に副市長があり、その下に企画総務局や財政局、道路交通局などの部局があるわけですが、その中に「市民局」という部局があります。

市民局は、市民活動推進課や生涯学習課、市民安全推進課などといった部署があります。

広島市市民局長を務めていたのは杉山朗氏でした。

今年3月をもって退職した彼は、再就職先として、6月27日、広島駅南口開発株式会社の代表取締役社長に就任しました。

https://www.city.hiroshima.lg.jp/uploaded/life/288115_523194_misc.pdf

 

広島駅南口開発株式会社は、広島市のまちづくりの最重要課題のひとつである広島駅南口市街地再開発事業を推進するとともに、事業完成後の再開発ビル、つまりエールエールA館の良好な管理運営を行うため、広島市を筆頭株主とする第三セクター方式により設立された株式会社です。

 

これの何が問題なのかというと、南口開発の株式の2/3以上は広島市が持っているわけです。当然、この人事にも広島市の意向が含まれています。

 

市民局には図書館関係を担当する生涯学習課があり、広島駅南口開発株式会社が管理運営するエールエールA館に図書館を移転する方針。

言ってしまえば、とある大家会社の営業本部長が、定年退職後の再就職先として店子会社の社長に横滑りしたようなものです。

 

誰がどう考えても、エールエールA館への図書館移転をスムーズに行うためであることはわかるはずです。

 

 

 

 

 

 

 

今回の図書館移転問題に限ったことではありませんが、広島市は基本的に「文化」という視点が欠落しています。

1945年8月6日の原爆により、広島市内に根付いていた文化が失われてしまった、と考えることもできます。

しかし、だからといって、文化を大事にしなくていいということは、ありえないことです。

 

「文化」とは、その社会の構成員、すなわち人間が共有している行動様式や物質的側面を含めた生活様式であり、人間が生活していく上で必要不可欠なものなのです。

 

しかしながら、広島市ではこの「文化」という視点での議論は全くされておらず、利益優先の進め方がなされています。

市民の意見もまともに聞かず、人間が生活していく上で必要不可欠なものである「文化」という視点を度外視した、独裁的な利益優先の進め方には不信感を抱かずにはいられません。