いくつかスタンダードなDAWは使ったことがあるが、私にはabletonが一番相性がいいようだ。言ってしまえば、単なる製作ツールをどうこう評価するのもいかがなものか?とも思うが、製作する上でこの相性はとても大事なのでちょっと私見をまとめてみました。
私にとってabletonは思考を中断するような操作をしなくて済み、操作していて楽しいと思えるくらいMIDIとオーディオが同様な操作ができる直交な操作体系を備えたDAWなのである。
オーディオをMIDIのように扱えるというのはオーディオとMIDIのコンポジットなトラックを作る上では重要だと思う。
ableton liveを一言で言えば、「やりたいことが思考を中断することなくすぐできるDAW」ってところでしょうか。
いままで取説のたぐいはほとんど読んだことがないが、これできるかな?と「おりゃ!」っと操作したらできた。の連鎖でそこそこ使えるようになりました。これは、まさしく優れたUIを備えている証だと思います。
たまに「ループベースのDAW」と勘違いする方がいらっしゃるがそんなことはありません。
最初はスタンダードなDAWと比べると少々異色で、とくに、セッションビューとアレンジメントビューの関係とかファイルタイプ別の振る舞いあたりが難解に思えた。でも、そのあたりを越えるとシンプルで使いやすいことがわかった。
pros
・タイムストレッチエンジン
abletonはタイムストレッチをwarpと呼んでいるが、この機能が売りの一つのableton。初期バージョンから、タイムストレッチエンジンが搭載されていた。
そのため、基本設計がしっかりしていたため無理なく機能拡張が出来ている。warpモードを選択できるので素材に最適なタイムストレッチが可能。live 8からフォルマント保持できるワープモードも追加された。
このワープはゴムバンドのように時間軸をいじれるので、破綻させるといい感じになる。
・easy to use
複雑なことが簡単な操作で行える。制限事項が少ない。世の中、簡単なことを複雑に見せているものも結構あります。
・スムーススクロール
製作中に時間軸拡大することはよくあるがスムーススクロールするため、画面が切り替わることでの思考の中断が無い。
このスムーススクロールはアレンジメントビューだけでなく、デバイスラックに表示しているクリップも同期するという優れもの。
しかも、クリップの名前までもスムーススクロールしてクリップ画面上にある限り表示され続けるあたりは泣ける配慮。
・トラックの複製機能
ちょっとこのトラックをベースにモディファイしたトラックを作りたい。ということがあるが、トラックに含まれるインスト、エフェクト、クリップ、エンベロープのすべてを複製してくれる。
別プロジェクトから任意のトラックをインポートも可能。
・直感的なピアノロール
とっても鉛筆メタファー。ペンを持ち替えたりする煩雑な操作は必要ない。ノート追加、範囲選択、ドラッグ、デュレーション変更がそのままできる。
・プラグインのホットスワップ
プラグインあるいは設定を乗せかえることができる。たとえば、アンプシミュレータをこちらに変えてみようみたいなことができる。
・ファイル、ブラウザ画面
画面左に常に出ている。複数のアイコンに表示させる内容を定義できるため、プラグイン、サンプル、MIDIデータなど簡単に取り出せる。
・とっちらからない画面
機能選択したら新たなウインドウが開いて、、みたいなことが無いため、ウインドウをいっぱい開く必要がないため、狭い画面で使える。基本画面はセッションビューとアレンジメントビュー。この2つはTABキーで切り替え。
・意外と便利なセッションビュー
簡単に言えば、作成したクリップのデータベースを保存しておく画面。
DJがライブで使うのがメインな画面だが、製作でも思いついたフレーズのメモとして重宝する。
・オートグリッド
グリッドがズームレベルで自動に変ってくれる。ズームで直感的な分解能を選択できる。
・ウインドウ全体のズームもできる。やろうと思えばHD画面だと48トラックくらい一覧表示できる。実用性はさておき。

・マーカーいらず
クリップ指定するとそのクリップの先頭から再生するので、マーカーを打たなくても編集に集中したい場所を一撃指定できる。
・メニューで言語選択できる。
通常はインストール段階で言語を選ぶが、メニューでできてしまう。
・ブラウザでのプレビュー時に聞きたいポイントに任意シークできる。
・豊富なファイルタイプ
私は1つのフォルダーにすべて集めておきたいので、そうしているが、wavデータを除いて保存も可能。ま、これは他のDAWにもあるが、不必要なサンプルの整理などプロジェクト管理機能も充実している。
・異なるレートのオーディオクリップ混在可能
一般的には、オーディオインターフェースとプロジェクトのサンプリングレートは一致させないといけないが、abletonの場合は、異なるレートのクリップを混在できる。
・出力にSRC装備
私は最終的にはレンダリングが正しく行えれば、モニタリングのクオリティーはそこそこでいいという考えなので、出力にSRCがのっているため、PCのサウンドカード、オーディオインターフェースのサンプリングレートに依存せずに鳴らせるのはポイントが高い。
・自動化されたVSTパラメータの自動アサイン
プラグインのつまみを動かすだけでトラック、クリップのエンベロープが反応する。あとは動いたエンベロープでお絵かきするだけ、、つまり、メニューからパラメータ選択したりとか、えーっと「このつまみをMIDIのCC何番にアサインして、、」みたいな面倒な操作が必要ない。この機能は手持ちプラグインのほとんどで機能するが、プラグイン側の仕様によるためOmnisphereなど一部では機能しないが、そのときは従来の手順で簡単にできる。
・リサンプリング機能
プラグイン操作した結果を別のトラックにリサンプリングできる。
・おまけがしょぼい(のがいい)
気に入ったプラグインは自分で買えばいいので、おまけのハンパなものがインストールされるなら無いほうがありがたい。(8ではスライス、ボコーダー、アンプシュミレーター、ダイナミクス系エフェクトが強化された、結構使える)
・アップデータがフルインストーラー
個人的には差分アップデータってなんか好きじゃない。サイズもコンパクトなのでDLも楽。
共有ライブラリを使っていないため、バージョン間の独立性が高い。
・動作が比較的安定している
live8は6と比べると少々安定性は下がった。フリーズしてもリカバーしてくれる。
CPUメーターが限界に近づいたときに、粘って限界点が予測できるのもありがたい。
以下、ビデオ関連。これがなかなか良くできている。
・ビデオのフレームを任意のオーディオトラックに貼り付けられる。
・warpでBPM同期できる。(ロックしたBPMからシステムBPMで相対変化するので、異なるBPMのビデオをシンクできる)
・ワープマーカーでビデオもエラスティックできる。
・エクスポートファイルタイプが選べる
・ビデオエフェクトが掛けられる。
という感じで静止画、動画をオーディオ感覚で編集、タイムストレッチした動画を作ることが可能。
cons
・64ビットホストが無い。(現時点version 8では)
おそらく、ラッパーでの実装を嫌っているのではないかと思う。
・MIDIクリップでプレビューシンセが指定できない。(.alcはできるけど)
・クリップにMIDIエンベロープは作れるが、トラックにインストエンベロープは作れるがMIDIエンベロープが作れない。
ま、再配置のためクリップで完結しておいたほうが便利なので実害は無い。
・vstpluginフォルダーが1つしか指定できないので1箇所に集める必要がある。(Win版の場合。Mac版は2つ指定できるみたい)
・ビデオはリバースできない。(するとオーディオだけリバースされてビデオはブランク)
・ビデオは分割したあとクロップができない。