パンデトリルチャギ……直訳すると「反対回し蹴り」と聞いて、
何の事やらさっぱりという人も日本語意訳の「後ろ回し蹴り」という言葉ならイメージがつくのではないかと。
いわゆる正面を向いた状態からクルリと180度回転して後ろ脚のカカトで相手を蹴る技ね。
ちょっとしたアクション映画でもドラマでもよく見られているそれです。
素人学(格闘技経験ゼロ)的にいうと、このパンデトリルチャギ=後ろ回し蹴りというのは、
テコンドーに限らず(というかテコンドーが日本で一番マイナーなんだが)、空手でもキックボクシング系でも、
いわゆる「習っている人」が素人に見せつけて、「ビビ」らせるのには、一番分かり易い技のように思うわけで。
例えば、ケンカになりそう場面で、一発相手に向かって、このパンデトリルチャギで威嚇すれば、
大抵の相手(素人)は、「むむ、こやつできるヤツ」となり、
ケンカの熱を急速に鎮火させてしまうぐらいの威力はある。
そんでもって、周りのギャラリー、特にイケてる女子なんかにも、
「キャーッ格好いい」なんて騒がれそうなパワーも同時にあり、
「ねえねえ、空手ならってんだ?」なんてホットな質問を浴びせられる可能性もあり、
そこで、「いや空手じゃなくてテコンドーなんだけど」なんて言えば、
「なにそれ?」と目をパチクリされる可能性も大な、まさに素人学的に見て、
大技中の大技。
では、格闘技的に見ると、このパンデトリルチャギというのは、どんな位置にあるのか熟考すると、
熟考すれば、熟考するほど、「ほとんど意味がない」という結論になるわけ。
パンデトリルチャギのどんな熟練者でも相手もそれなりに「心得のある」場合、実戦でこの技を「必殺技」にすることは無理、と思われる。
別段、パンデトリルチャギに限らず、技の仕掛け側の運動範囲が大きい、大ぶりの打撃は、経済で言う、「費用対効果」じゃないが、言い換えて「運動量対効果」から見れば、
「まず第一に選択されない」技となってしまう。
大ぶりな技は、すなわち「よけやすい」、「かわしやすい」技でもあるからだ。
加えて、相手にかわされ、「空振り」で態勢が崩れた瞬間に、今度は相手に決定的な反撃のチャンスを与えてしまうという、致命的な欠陥が「大ぶりの技」ある事も容易に理解されよう。
そこで少し考えれば、当然心得のあるもの同士の闘いでは、有効な小技を積み重ねて、もっとも最短距離と時間で相手を仕留めるのがセオリーとなる事が解る。
格闘技の奥義を振り返る事もなく、誤解を恐れず素人が大雑把にまとめると、
打撃系で言えば、ローキックで相手の動きを止めて、小刻みなパンチで相手を追い込んでいく形になるのが自然だろう。
手だけに特化したボクシングを見れば、もっと分かり易い。
大ぶりで激しい打ち合いを描いたマンガなどでボクシングを知ったモノから見れば、実際の試合は、えらく地味に見える筈だ。
マンガなどでよく見る始めから大ぶりのフックをかます選手など実際には、いるわけもなく、必ずショートレンジ(短い距離)からのパンチの攻防から始まる筈だ。
大ぶりの技は、よほど相手を追い詰めた状態か、相手の防御を崩すためのフェイントでなければ、見られないのが、普通だ。
ところが、これがテコンドーに特化した話となると、
100%話がひっくり返る。
テコンドーのスパーリング(組手)、特にITF系のテコンドー(ちなみにオリンピックはWTF系でルールが違う)には、
パンデトリルチャギは必須になる。というか、この技を使えないとまるで試合が組みたてられないと言ってもいいのではないか(と、私は思ってます。あくまで私見。でも多分当り)。
なぜ、そうなのかは、テコンドーのルールにあるわけで、その話は長くなっちゃったのでまた別機会に。
ま、兎に角、タイトルのテーマに戻れば、このパンデトリルチャギ、アラ50&デブそして腰痛持ちの身にめちゃめちゃ難しい技なのだ。
壁を掴んでの後ろ脚の柔軟トレーニングのお陰で以前より形になってきたものの、
ミットを持たしての練習で、昨日は足が滑り、開脚したままのヘンな形で転び、腰痛を悪化させてしまった。
アラ50&デブにはやはりテコンドーは無理なのか……と心が折れそうになった次第。
しかし、子供達はいくら変な格好で転んでも全く平気のヘイザ。
しかも、息子は身体がまだまだ固いのでストレッチからの修練がもっと必要だが、
娘の方は、身体が柔らかく、なんだかんだで、もうすぐパンデトリルチャギをマスターしそうなのだ。
オヤジが腰に手を当てて悶絶している中、子供達はどんどん上達していく。
悩ましい、悩ましい、そんなパンデトリルチャギの話にて失礼。