藤波辰巳vs前田日明

 6月12日のプロレス界と言えばこれ。1986年(昭和61年)大阪城ホールで行われたIWGPヘビー級王座決定リーグ戦藤波辰巳vs前田日明の一戦。当時の前田はUWFの大将として新日本のリングに上がっており、プロレスラーとして全盛期。この1986年は最もインパクトを残した年。この年のIWGPはABグループに分かれており、Aグループは猪木、坂口、藤原、アンドレ等。Bグループは藤波、前田、マードック等。猪木は前田とはやる気がないので当然別グループ。

 

 前田はこの試合前のインタビューで「プロレスというのは総合格闘技でなければならない。蹴ればキックボクサーを上回り、投げでは柔道家を上回り、極め合いではサンビストを上回る...それが理想のプロレスラーの姿であるべき」と熱く語っている。

 

 試合は嵐のような前田の蹴りが炸裂。藤波もラリアット、逆方エビ固めで反撃するが、前田のチキンウイング・フェースロック、三角絞め、キャプチュ-ド。藤波もジャーマン、サソリ固め。いい試合だ。前田はコーナーに詰まった藤波に助走なしのニールキック。カカトがこめかみ付近に命中し、藤波は大流血。このシーンは衝撃的だった。のちに「大車輪キック」と呼ばれるようになったこの蹴り。なんちゅう危険な攻撃。この後前田はドラゴン・スープレックス、ブレーンバスター。フラフラの藤波。止めとばかりにニールキックを狙う前田。その瞬間藤波のレッグ・ラリアット気味のフライングキックの相打ち。両者ダウン。藤波立てず、なぜか前田も立てず両者KO。「最後なんで前田もダウンしてんの?」の結末だったが、この試合は「新時代の格闘プロレス」と評価され東スポのプロレス大賞の「年間最高試合賞」を獲得。

 確かにいい試合だったが、この試合は前田が7割攻めていた。この試合の何週間か前にこの二人は対決している。しかしその時は新日vsUWFの勝ち抜き戦であり藤波は藤原戦の後に前田と対決してるので、純粋なシングルマッチではない。その時の試合は前田が一方的に蹴りまくって攻めまくってTKO勝ちしている。この大阪城ホールの試合でも途中から同じように前田が攻めまくっている。逆に言えば藤波の受けの凄みが光ったか?まあ相当ダメージありそうだったけど。前田はこの試合には結構満足そうだったが、藤波にしてみりゃ「こんな危険な奴とは二度とシングルでやりたくない」と思ってもおかしくはない。事実この二人のシングルマッチは二度と行われなかった。