森信三先生の講演録「中学生諸君へ」(18)

 

10月6日(火)

 

(4)結婚について

 

以上で私の「卒業後の心得五ヶ条」は済んだわけですから、もうこれで話は終わってもよいわけです。しかしこれでボキリと話を切るのも、少々芸がありませんので、これから一つ付録をつけ加えることにしましょう。しかもその付録たるや、子ども雑誌の付録のように、あるいは本文より付録の方が面白いかも知れません。

 

ではどういう付録かと申しますと、それは「結婚に関する注意」なんです。(一同ざわめく)。そこで最初に先ず男性の諸君に対して「どういう女を貰ってはいけないか」ということを申してみましょう。(一同大笑)。それには二つあると思うんです。第一は、はきものを脱いだ場合、揃えられぬ女です。

 

そしてもう一つは、席を立った際に椅子を入れない人です。このどちらか一つを守れない人を貰うと、いかにきれいな人でも、諸君は将来幾ら稼いでも足りないということになりましよう。(一同大笑)。それというのも、人間のしまりのある無しは、はきものの脱ぎ方を見るのが一番早道であり、かつ確かだからです。

 

同時に以上の二条件さえ合格すれば、後はどういう人を貰おうと、それは諸君のご自由です。たとえば丸顔であろうと、瓜ざね顔であろうと、また色白であろうと、小麦色であろうと、それらのことは、一切諸君のご自由にまかせます。(一同大笑い止まず)

 

次に女の方々に対して「男の選び方」について申しましょう。(全員笑い、しばし止まず。先生ニコニコされながら)それはですね。年頃の若い男女が五、六人いる場合、若い女性の人々に一ばん気に入るような話し方をする男は、危険と考えて大体間違いがないようです。つまりそういう男は女たらしの危険性があるというわけです。(一同爆笑)。

 

なぜかと申しますと、そういう男は、これまですでに、幾人もの女を犠牲にすることによって、そうした腕前を身につけた男だからです。(一同笑い止まず)。ではどういう男が一ばん頼もしいかと言いますと、まるで黒松のようにモソッとして、女の気に入るような話はしない人間でしょうな。(一同大笑)。

 

ところが、そういう頼もしい男に対して「あの人、わたしの存在を無視していけ好かんわ」などと、女たらしの方を好みがちなようですね。(爆笑また爆笑)。それというのも、世間というものをよく知らない処からくる非喜劇という外ないわけです。では以上の付録をもって、私の話を終わることにしたいと思います。(了)