森信三先生の講演録「小学生諸君へ」(6)

 

9月7日(月)白露。

 

北里柴三郎や野口英世のように

 

次に私の考えでおすすめしたいのは、誰でもよいが、学歴はなくて偉大な仕事をした人です。最後の一人を選ぶには、自分の仕事をする上に、なるべく近い人がよいと思いますが、偉大な事業をやった人の方をおすすめします。その点では、豊田佐吉、御木本幸吉も小学校

を出ただけです。

 

豊田佐吉は、当時帝国大学の工学博士達が、逆立ちしてもできんような立派な仕事をしたのです。小学校四年を出ただけで、大工をしながら、世界の工学博士の誰もが作れない紡績機械を作ったのです。当時世界で一番優れていたイギリスの紡績工場のものより、優れたものを作ったのです。全く奇跡というほかはありません。

 

御木本幸吉も小学校四年だけです。それでも晩年東京大学の水産学の教授をひっぱってきて、自分の研究所の所長にしたのです。どちらが頭がよいかというと(先生ニコニコされながら)御木本幸吉の方が偉いんだから、すごいですね。

 

「一つこういう研究をしてもらいたいが」と言うと、所長さんは「ハイ」と言ってやる。結果が出て、それをどう解釈してよいかわからぬ時も、御木本翁は「わたしはこう思うが、一ぺんやってみて下さい」と言うと、その通りになったというのです。

 

すごい話ですね。小学校四年を出ただけで、日本における水産学の最高権威よりも偉いのです。つまり急所がよく見えるのです。しかし、皆さんがどういう人を選ぼうと、それはご自由です。ただ読むのは広く世界中の偉人について読んでいただきたいと思います。

 

しかし、最後の一人は、西洋人ほり日本人の方が、学ぶのに親しみがあってよいと思います。さらに学歴からいうと、北里柴三郎や野口英世のように、大学を出て学者になった人も無論よいわけです。偉大な事業をなし遂げた人、特にその中でも学歴が低くてやり上げた人を、見逃さないようにしてほしいと思います。