「全一学とは何か」

 

7月11日(木)真珠記念日。

 

森信三先生提唱の「全一学」(日本的哲学)を理解するため、「全一学とは何か」を紹介しています。本日は狭小な島国ゆえ、世界にも比類ない同一民族、同一言語の民族が形成されたと説いています。

 

・何となれば日本民族は、中国大陸の東方洋上に横たわっているため、東方以外のあらゆる方面から、幾多の諸民族が移住したいわば混合民族というべく、しかもそれらの諸民族は、この比較的狭小な島国において、まるでルツボの中における色々な鉱物のように、永年の間に完全に近いまで溶融されて、ほとんどその痕跡を留めぬほどに渾然たるものになったといえよう。

 

その結果は世界にも比類なく同一民族、同一言語という特異の民族が形成されるに到ったゆえんである。

 

・この同一民族、同一言語という民族的特質は、決して長所のみとは言えぬであろうが、同時に物事に一長一短あるはいわば宇宙的真理というべく、そこには短所があると共に長所もあるべきはずである。

 

然るに戦後の三十年は、大東亜戦の結果が悲惨なる無条件降伏に了った為に、その反省は時に自虐的傾向を生じ、その為に今日まで、かかる特異の民族たる日本民族が、今後国際的関連裡において果たすべき役割は如何という点に関して、今日に及ぶも明確に示されているとは言い難いものがある。

 

・この点について我人は如何に考えるかというに、それは人類の将来のために東西文化の歩み寄りに対し、道開きの役割を演じ、そして能うべきはその雛形とか縮図ともいうべきものを世界の人々の前に提供すべきかと思われるのである。

 

それへの可能的資格の一つとしては、西欧的な標音文字と東洋的な象形文字の両者を、程度の差を問わねばほとんど全国民が何ほどかは読むことができ、かつ解し得るという点であって、かかる根本的な一事のみを挙げても、世界にその類比は求め難いといってよかろう。