土曜雑感 「21世紀型専門店」から⑥
6月22日(土)
拙著「21世紀型専門店」(1998年9月発刊)からプロローグー「ひとりごと」の紹介です。ライフスタイル変化できもの需要が大きく減少し、廃業、蹉跌が多発していく激動の1994年から5年間、いかに未知なる21世紀へ対応していくかの問題意識と対応策です。
本日は「21世紀型専門店」で強調している課題のなかで、「三つの革新」について説明しています。
・1994年から21世紀への5年間を集約
「戦略を捨てるとは承服できない」と、ある経営者からお叱りをいただいた。この点についてはやがて嶋口充輝教授(慶應義塾大学)が、日本型成功企業の特質を「不合理の合理性のメカニズム」と呼び、嶋口門下の金顕哲助教授(名古屋商科大学)が「戦略なき経営」と特徴づけたことで、「戦略を捨てて生活態へ」はそれなりの正当性を持っていることが理論的に実証された。
グローバル化の時代とはいえ、欧米人の戦略重視に対して日本人の特質が徹底した理念重視にあることは疑いえないという事実である。
さて、「地域になくてはならない店」を具現化していくたえめ、1994年から今日までの5年間、弊社がて提唱し、実践してきたことを紹介するのが本書発行の目的である。毎月、きものの会報「ウエーブ」(今月の提言)、ジュエリーの会報「ジュエリー21」(マインドレター)にその時々に感じるままの「ひとりごと」を書き綴ってきた。
その意味ではまさしく筆者の偽りのない心情そのものである。21世紀の「共創社会」(石川光男教授)を想定し、「地域になくてはならない店」づくりを基本に、5年間の会報から抜粋し、次の項目で編集した。
第一章 荒地を耕す
第二章 顧客主導のマーケティング
第三章 21世紀型専門店への「三つの革新」
第四章 感動が人を呼びマーケットを拓く
第五章 崩壊から新しい創造
第六章 店は人なり 人は店なり
各章共に年月の古い順に紹介し、文章はあえて手を加えず、「その時」を重視し原文のままを可とした。
・本書で強調したい5つの問題――変革しなければ明日はない
本書で強調したい21世紀への課題を5点に要約しておきたい。ちなみにその5点は相互に密接な関係を保っている。
第一は成熟社会へ適応していくため、小売業は変わらなければならない、革新しなければ
ならないということである。革新(イノベーション)は存在根拠への問いかけであり、したがって根本からの変革を意味し、決して改善、改革レベルの変化ではない。
言うなれば劇的な変化であり、これを「三つの革新」と呼んでいる。こうした革新なくして、21世紀を迎えることはできないと考えたい。「三つの革新」は次の三点である。
① 経営者の自己革新
② 経営革新=売り上げ追求からCS(顧客満足)、 ES(社員満足)の追求により地域社会の発展に貢献するマネジメントの確立
③ 販売革新=業種、業態という店の論理から生活者の利益を優先する「生活態」への転換を図る。
第二は「三つの革新」を実現するために「店は人なり 人は店なり」、つまりは経営者その人の変革が不可欠だということである。少なくとも「なぜ店を経営するか」への主体的な商人哲学(経営理念)が問われているのである。
そのヒントとしてわが国が生んだ巨人、二宮尊徳の「荒地は荒地の力で耕す」(荒地を耕すに荒の力を以って)を学んでいただきたいと思う。いまさら尊徳の声も聞かれるが、「今だから尊徳」というのが筆者の偽りない心境である。(つづく)