生き方、社会、ビジネスの未来予測

 

5月11日(土)長良川鵜飼い開き。

 

「消齢化社会」(博報堂生活総合研究所著、集英社インターナショナル)です。1992年から始まった博報堂生活総合研究所の長期時系列調査によると、近年、生活者の年代に基づく価値観や意識の違いが小さくなっているということです。

 

今までのマーケティングで、年代別と所得別は基本的な属性として広く活用されてきました。しかし同研究所によれば、年代によって意識や価値観が異なる時代が終わった!とのこと。これは無視できない大きな潮流です。この現象を同研究所は「消齢化」と命名しています。

 

例えば、「将来に備えるよりも、現在をエンジョイするタイプである」という生き方についての回答。男女全体(20〜69歳)では、1992年は39.0%、2022年は41.4%で、30年間でそれほど変化したとは言えません。

 

すなわち1992年時点では年代別の数値は開いていたのですが、近年はその差が近づいているとのことです。具体的には、若手層で「今をエンジョイしたい」という意識が減少しする一方で、高年層ではその意識が増えて、結果的に年代差が小さくなっています。

 

あるいは、「夫婦はどんなことがあっても離婚しない方がよいと思う」、「車にお金をかけたくない」、男性でも育児休暇をとるべきだと思う」などでも、年齢による違いが小さくなっていることが確認されているようです。

 

これらは若い生活者も高年層も以前と比べて、生き方へのしがらみが減り、自由な生き方の手段が増加した。言い換えれば、全年代を通じて生き方の選択肢が広がったということです。「年相応」「適齢期」などの固定観念に縛られず、自分の「したい」ことを追求し始めたということです。

 

その背景には3つのパターン(型)があります。1つは「上昇収束型」―各年代のデータが増加しながら近づいていく。2つは「下降収束型」―「上昇収束型」とは逆に各年代の回答が減少しながら近づいていく。3つは「中央収束型」―「嗜好や趣味、関心」について、年代別の差が小さくなっていることです。

 

それでは「消齢化」がさらに進行した世の中は、これからどうなっていくのか?その未来の可能性を4つの変化で捉えています。

 

1.「個人の生き方」が変わるー「実年齢」から実質年齢」へ

 

今まで多くの人は世間の目もあり、「年相応」、「適齢期」を意識してきたのです。しかし、消齢化の進行は、そのイメージを弱めています。これまでは「実年齢」が生きる基準として機能してきたのですが、これに代わって重視されるのが肉体年齢、精神年齢などフィジカルやメンタルがどの程度かを測定して算出する「実質年齢」です。

 

2.「人との関わり方」が変わるー「出会い」「交流」「対話」へ

 

全年代別に価値観の違いが小さくなり、「基本的な部分で、考え方はそれほど離れていない」という共通認識が持ちやすくなり、人間関係の構築によい影響を及ぼすかも。見知らぬ人とも「わかり合える」を基盤とした人間関係が広がっていく可能性があります。

 

3. 社会構造が変わるー「小さな群」から「大きな塊」へ

 

生活者の性別、年代などの「デモグラ」はわかりやすい属性として広く利用されてきました。

これからの社会構造は、「小さな群」ではなく、「大きな塊」へ。これが一つのキーワードになります。規模の縮小に悩むマーケットに、「大きな塊」は「新たなマス」を発見していくチャンスになるかも知れません。

 

4. 市場が変わるー「ヨコ串」から「タテ串」発想へ

 

各年代の好みや関心の違いが小さくなっていくことで、年代ごとの「ヨコ串」発想より、複数の年代を通貫して考える「タテ串」発想が有効になります。例えば、店舗やモールのフロア構成、年代別のゾーニングから「タテ串フロア」へ。さらに「親子コーデ」「母娘旅行」など二世代対象の商品開発。