「全一学とは何か」

 

4月30日(火)

 

森信三先生提唱の「全一学」(日本的哲学)を理解するため、3月6日から「全一学にたどりつくまで」の講演(昭和52年)を紹介してきました。哲学に関心をお持ちの方には、実に興味深い内容かと思います。「全一学」を理解するには「西田哲学」との関わり、さらに三浦梅園に象徴される「野の思想家」は避けては通れないということです。

 

講演を通して、日本的哲学としての「全一学」の概略は理解できたここと思います。そこでさらに理解を深めるため、全集に納められた「『全一学』とは何か」を紹介します。この論文は語録風の短章で構成し、「全一学」の要点を解説していますが、下記案内の通りの哲学論で、難解な部分が多いのも事実です。

 

寺田一生先生の「解題」によると、その内容は次の5点に集約され、読書会のテキストにふさわしく、「自由な討議と探究を誘導する」要典だと位置づけています。

 

1.形而上学的探究から宗教的信の経緯。

2.万象における無限連関と理法の解明。

3.世界の哲学史上の三大世界観、ヘーゲルの弁証法的世界観、華厳的ライプニッツの世界観、「易」にける陰陽の世界観の解説。

4. 全一学とは極大観を溶融しつつ、極小の事象をも照らす識見を内蔵する。

5. 男女問題から性欲、食欲の二大本能から「死生観」に至り、さらに家庭、学校、社会問題から民族の使命観に及ぶまで、行く手を照らす一大総合的叡知の学というべき内容を包摂する。

 

さらに、根本命題である「全一的生命」の自証展開における三つの注意点です。

 

1.一切の固定概念を拒絶することです。「いのちの自証」を本題とする全一学的探究においては、常に動的統一の立場こそが望ましいとされています。

2. 生命自証の立場は、あくまでも直観、すなわち知情意円融の立場に立つことです。

3.  慎むべきことは、一切の直線的、一面的思考を排し、円環的循環・浸透こそ、そのあり方でなければならないということです。