資本主義の先にある社会経済システム(42)

 

2月26日(土)

 

7.社会価値を高める21世紀型の資本主義

 

前回は名和高司氏(一橋大学ビジネススクール客員教授)の「ハーパス経営」(東洋

経済新報社)から資本主義の先に来るものとして、下記の3点を紹介しました。

 

1.人本主義(Talentism)

2.知本主義(Intellectualism)

3.志本主義( Purposism)

 

「 PURPUSE」(パーパス)をなぜ「「志」と訳すかについて名和氏は、日本人は古来、「ヤマト魂」という強い志を持ち続けてきたのであり、日本の企業はそれぞれに独自の志を軸に活動してきたらだと述べています。

 

資本主義が破綻した今こそ日本の原点に立ち返り、そこを起点に見えない未来に向けて志を貫いていくべき「志本主義」の目指すべきではないかということです。そもそも志が成長への活力だという考え方は東洋では主流だったのです。

 

たとえば、渋沢栄一が「論語と算盤」で「志を立てることは、人生という建築の骨組みだ」としつつ、「利益の拡大」を目的化しやすい資本主義の弱点にも注目し、高い倫理観と志の重要性を説いていることを強調しています。

 

名和氏は「論語と算盤」から100年を経て、ようやく世界が渋沢の思想にたどり着きつつあると述べ、「次世代のSDGsをめざせ」と提唱します。「SDGs」のたとえば「貧困をなくそう」「すべての人に健康と福祉」など17項目は、もはや議論の余地がない課題だからです。

 

企業のにとりSDGsだけでは競争優位につながらない。したがって、50年先を考えた独自の「18番目のゴール」が大切だとしています。その切り札が「サスティナビリティ(S)×デジタル(D)×グローバル(G)=「新SDGs」(2050年目標)です。

 

イノベーションを図るにはデジタル視座が不可欠ですが、デジタルは手段であり、大切

なことは目的、すなわち志としてのサスティナビリティを主眼に据えること。さらにグローバル視座で、多様性を尊重し世界の分断を防止することです。

 

その根底はマイケル・ポーターが提唱した「CSV」(共通価値の創造、2011年)です。すなわち社会価値を高めながら、自らの経済価値を高める経営モデル。利益を再投資し続けることで、社会価値を高め続けるのが21世紀型の資本主義だということです。

 

長期的視点から顧客、社員、環境、社会の価値を高め、人々の心に火をつけなければならない。利益は結果であって、目的であってはならないということです。米国の経営が余りにも株主至上主義に走ってきたことへの反省でもあります。

 

資本主義の新しい方向としての志本主義( Purposism)を見て思うことは、わが国の「商人道」はいささかも間違ってはいなかったという確信です。古くは鈴木正三の商人の生き方、石田梅巌が説いた商人道、さらに「京都型商法」「三方よしの経営」などです。

 

ちなみにきもの専門店の「きものや」(川内俊秀社長、北上市)さんが制定した志(存在意義)は、「素材と仕事の質を重視して感性までも継承する百年着物を届ける」。三松出身で創業以来、顧客満足を徹底追求してきた同社長は下記のように訴えます。

 

「果たして本当に必要な店なのかどうか?当店の存在意義を洗い出す作業の中からようやく志に辿り着きました。『小さな店でいい・評判のいい店 愛される店』は必ず守って参ります。」

 

ここまで来ると、店の存在意義、志はまさに今を生きる社長の生き方、人生観そのものだとの感を深めます。専門店がコロナ渦、コロナ後をどのように生きるかの存在意義は、すなわち今まで以上に社長自身の生き方が厳しく問われているということではないでしょうか。