人生いかに生きるべきかの「修身教授録」を読む

 

10月22日(月)

 

第11講 人と禽獣と異なるゆえん

 

(大意)

 

 人間が禽獣と異なる根本は、理智の奥底にあって、常に理智を照らし導くと 

 ころの、真の正しい生き方を教える人生の叡智です。真の叡智は自己を越え

 た深みから射してくる光です。

 

「人身うけがたし」の立場から人間として生まれた喜びはどこにあるのでしょうか。禽獣と異なる根本はどこにあるかということです。その一つは「言葉」の有無にあります。

 

しかし、禽獣にも仲間同士で意志表示が行われていることは間違いありません。したがって、単なる言葉の有無は根本的に区別する根拠とは言えません。次には道具を使うか否かがあります。

 

たしかに人と禽獣を区別する重要な微表といえます。しかし、この考え方も人間生活を外面、衣食住の側より見たもので外形的にすぎないのです。最後のひとつは内面的本質としての理性の有無です。

 

この場合理性という言葉の意味する内容が問題です。理性という言葉で単なる理知の作用を意味するとしたらたしかに禽獣には見られないものです。しかし、理智の働きは未だ人間生活のためにいかに善用すべきかを示してはいません。

 

根本的には理智の奥底にあって理智を照らし導く人生の叡智がなくてはなりません。この叡智は人間界を越えたところから照射してくるのです。自分の姿をわが心に映す鏡のような心にならない限り、正しい道は見えないのです。