武者小路実篤の「新しき村五十年祭」へのメッセージ

 

7月31日(水)

 

「新しき村」は昨年百年を迎えました。50年前の「五十年祭」へ向けた実篤のメッセージを紹介します。

 

「五十年祭を目出たく行いたと思っている。勿論来年まで僕が生きていられるかいられないかは、今の僕にはわからない。しかし生きていなくても五十年祭をするには別にさしつかえない。

 

・・・死んだからと言って、新しき村の行き方の本当さに変わりはない。僕は益々新しき村のゆき方が本当だと思う。自分に託された一つの生命を大事にしている人は少ない。

 

ただ食う事とか、この世に生きただけが事実で、この世に生きただけ、この世の為、人間のため、自我のために働こうと考えている人は少ない。生存が総てである。自分の使命と言うことは考える必要がないように思っている。

 

自分が生きたので、世の中が少しはよくなり、皆が幸福になった。少しは皆の役に立った。それ以上に自分を本当に生かした。そういう自覚をもって生きている人は殆どいない。そして自分を正直に生かそうと思う者を馬鹿にしている。

 

・・・そういう人から見ると、我々のしようと思っている事は空虚に見えるであろう。だが、僕達は、自分を本当に生かそう、自分を本当の人間として正直に生かそう、嘘の自分では閉口だ。

 

・・・自分の生命を充実して生かそう。本当に自分を生かしたい、充実して生きたい。本当に皆を愛し、愛されて生きよう。嘘のない生活をしよう。皆が協力して皆で本当に生きよう。この気持ちのわからない人に新しい村はわからない。」(「新しい村」1967年7月)