「所有しなくとも許されて生かされる」⑩

 

2月5日(月)

 

「だれにも迷惑をかけないものなら頂きます」

 

「翌朝、私の最も親しい家の前に行きました。店を掃いていた番頭が『お早う』と、挨拶してくれます。『お早う』と、こちらも受けて庭に入りましたら、この女主人が『ご飯はまだでしょう』と、尋ねてくれまして、

 

『どうぞお上がりなさい』

 

私は庭に立ちながら『ハイ』と、答えてまだ上がりませんでしたが、あまり勧められますので、『少し私の申すことを聴いてくださいませんか』と、前置きしまして、

 

『私は普通の食物を頂くわけにはいきません。減るものは食べません。私が頂いたその空虚をみたすために、あなたがどこからか補ってこなければならないものは頂けません。

 

だれにも迷惑をかけないものなら頂きます。あなたの気持がよくなるようなら頂きますと。つまりは『菩提心を起こしてください、節約してください、仲良くしてください、そうしてであったら頂きます。』ということでありました。

 

その家の主人は、近い二年間に親と主人と娘を亡くした未亡人であって、商売も手広く、使用人も相当ありますが、なにぶん負債が残っていたため、容易ならぬ逆境に立っていたので、昵懇な私も相談相手の一人にしていられたのであります。・・・

 

『どんなことでもしますから、食べてください』、『では頂きます』。 

やがて膳は座敷に運ばれました。」