「お客様との出逢いがあって、きものとして生かされる」

 

4月21日(金)

 

人間国宝、北村武資先生の工房を見学して話を伺いました。

 

「私は現場で仕事をしてきましたので、どんなものでも対応できる技術があり、しのいで来られたのです。おしゃれ物からフォーマルへ、九寸、名古屋へと時代の流れがありました。その流れの中で機屋さんに浮き沈みはありましたが、どんなものでも対応できる技術があったので、しのいで来られたのです。

 

工芸展も二世の時代になっていますが、伝統的な技術は、親から代々技を引き継いでいる人がほとんどで、認定者も二代目、三代目です。私のように一代で認定を受けるのは稀でおこがましいことです。

 

羅について、この間中国へ行って、その元のものを見てきました。今の技術をもってしても織ることができないです。本当に細い糸で、もの凄く繊細に織られているんです。色が朱肉でして、今からも二千年前のものが綺麗な色で残っているのです。二千年前にどうしてあんな緻密にできたのか?今もって不思議です。

 

和装の業界では、織物を作ってもそれは完成品ではなく、お客様との出逢いがあって、きものとして生かされていくのです。作っただけでは半製品です。どんな織物でも社会が必要としていなかったら、作る意味がないと思うんです。

 

一方で象徴的なのは越後上布や結城紬だと思うのですが、最終価格が非常に高い。産地が疲弊しています。当然後継者難も出てくる。良質なものが求められると思いますが、今以上に良質なものが作れない状況になりつつあります。

 

羅は編み物の延長です。規則正しい編み物なら無地になるのですが、それを計算することで模様ができます。意識的に編むところを外していくのです。