初めから道があったわけではない!

 

3月20日(月)春分の日。

 

きもの専門店として比類のない業績を実現しながら、チェーン化の戦略を選択しなかったのは高級専門店としての必然であり、創業者ご夫妻の並み外れた人間力の故に他なりません。

 

ご夫妻の深い愛情に育まれた二人のお嬢さんはそれぞれの道を選択し、幸せな人生、社会に役立つ人生を歩んでいます。かつて久子奥様が話しておられたことを想い出します。

 

「店へ出ていても、娘たちが学校から帰る時間には必ず家へ帰り、出迎えてその日の出来事を聞くようにしています。母親の勤めですから」と。子どもは母親の愛情に包まれて育っていくのです。

 

「初めから道があったわけではない。人が歩いていく中で道は開かれていく」は同会長のお好きな魯迅の言葉です。まさに自らが独自の道を拓いてきたようにお嬢さんも独自の道を拓いているのです。

 

社長を退いて「死に仕度いたせいたせと桜かな」と綴る同氏の心境は今やすべてを超越し、「悟り」にも似た境地ではないでしょうか。悟りは論理的理解ではなく直感的洞察で、まさに「忽然(こつぜん)として悟道す」(渓声山色)とされています。

 

直感的洞察により新しい世界が開けてくると推察します。同会長は「直感的洞察」を「動物的カン」と呼んでいました。

 

人間はいのちある限り、生きていくことがすなわち修業であり、学びが止むことはありません。悟っては悩み、悩んでまた悟る、これが道元の「道環」です。休んでいる暇はなく、永遠に修業が続きます。