人生最大の難事「桜町の復興計画」へ挑戦(16)

成長時代の発想、論理が狩猟民族の欧米型であるのに対し、農耕文化を基本とする日本人の発想、論理は成熟社会の発想に適合しています。

つまり神野直彦教授の見解(詳細は省略)から理解できることは、同じ欧米でも「北欧型」は「日本型」と類似しているように感じるのです。

経営戦略の視点から注目しなければならないことは、すでに「成長」から「成熟社会」への転換が進行していることです。

政治、経済を問わず、成熟社会への適応は今や不可欠です。よく言われてきたように成長時代のビジネスモデルはもはや衰退の他はないのです。

そこで強調したいのは、推譲が日本人の特質であり、成熟社会へ適応するために不可欠の概念だということです。

こうした問題意識から尊徳が遺した「全推譲の歌」、その意味、背景を探ってみたいと思います。

 仮の身をもとのあるじにかしわたし
 民やすかれと願ふこの身ぞ

この歌は尊徳が桜町の仕法に全身全霊で取り組んでいる心境を詠んだ、まさに尊徳の固い決意を伝えているようです。

佐々井博士は解説しています。

「このような心構えで生きることは、父母を失い、積小為大の法則を知って一家を独立させ、一切を捧げて桜町へ行くこととなり、大飛躍を遂げる画期的な決心になった」(この項 つづく)