10ヶ月間の「まとめ」に代えて(19)

さて21世紀に繁栄するであろうきもの専門店の「戦略コンセプト」仮説を、筆者は欧米型の経済合理性に対して「日本型」と規定しています。

欧米型の経済性に対する人間主義、文明性に対する文化主義、拡大性に対する継続主義(循環)を日本型の構成要素と考えたのです。

この3点を統合する概念が「日本型」です。(日本型専門店、1984年刊)むずかしい理屈を申し上げてすみません。

社会が成熟化していくなかで、きもの専門店はどのように変化していくべきか、変化しなければならないかという基本的な命題です。

欧米型のチェーン理論で武装し、拡大を続けるチェーンストアに対し、継続して繁栄できる専門店は地域に密着する「日本型」だと考えたのです。

「日本型」のモデルは京都の老舗が貫いた「京都型商法」(足立政男氏の命名)です。すなわち経営規模以上に継続を大切にする考え方です。

その背景にある継続重視の概念は質を重視する日本商人の美意識であり、茂木氏の「クオリア」に通じるところがあると考えられます。

多くの専門店が規模の拡大を意図し、チェーン化を志向するなかで成功したのはごく少数であり、大方の店は50億円手前で次々と挫折していったのです。

その要因はひとことで経営者の傲慢です。すなわち持てる力(尊徳の分度)を過信し、分不相応の拡大政策を続けたことです。

商いはどんなに有効な経済理論を活用しても、理屈のとおりには行かないものです。理論を活用するのは生きた人間だからにほかなりません。