再生への「革新プログラム」(5)

「販売企画」から「催事展開」を仕入れ先に依存するやり方が業界の常識になっている今、「何のために店があるのか」が問われるのは当然です。

今もなお社長が「いかに売るか」に知恵を絞っている経営感覚では、ライフスタイルの変化から取り残されるのは必至です。

売り上げ優先は顧客の不信感を深め、反面で販売経費の増大から経営危機に陥ったのです。いま商人は商人へ回帰し、顧客満足を徹底するほかに生き残る道はありません。

きもの小売業界のリーダー企業が矢嶋孝敏社長率いるきもののやまとさんであることに異論を唱える人はいないでしょう。同氏はマーケティングに精通する数少ない経営者のお一人です。

最近の同社長の講演録から痛感するのは、やまとさんが全店をあげ「当たり前」のことを「当たり前」に実行しようとしていること、すなわち客の視線に立ち「客が客を呼ぶ店」づくりをすすめていることです。

それでは今までのやまとさんは「当たり前のことをやろうとしていなかったのか」というと、そうではなく「当たり前」のことを実行してきたのです。

しかし今までの「当たり前」は、同じ「当たり前」でも業界内の「当たり前」であり、決して生活者視点での「当たり前」ではなかったといわざるをえません。

これは単にやまとさんだけではなく、業界全体の視線が生活者から遊離し、売る側の視点に立っていたと言わなければなりません。

かって「業界の常識は消費者の非常識」と主張した、その人が矢嶋社長であったと記憶しています。今まさに業界の常識が通用しない「そのとき」です。