今日は、久しぶりに少しだけ寒さが緩みましたが、日陰は震える様な寒さで真冬そのもの(やっと真冬と呼びたい気候になって来ました)。

 

門井慶喜「信長、鉄砲で君臨する」です。

歴史小説を書いても、抜群の面白さで止まらなくなる門井さんの一冊です。

2020-21年に「小説NON」に連載された連作短編集です。

ポルトガル船が種子島に流れ着いて鉄砲が伝わってから、鉄砲を一番活用した信長の死までと云う、歴史小説では手垢まみれの題材をどう料理したのか、それが楽しみで読み始めました。

 

連作と書きましたが、「鉄砲」と云うテーマで一本貫かれていて、元々長編小説としての構想を連載用に区切った感じです。

「序」に始める構成は、「鉄砲が伝わる」「鉄砲で殺す」「鉄砲で儲ける」「鉄砲で建てる」「鉄砲で死ぬ」です。各章のタイトルを見ただけで、歴史好きの人ならばどの辺りの話題なのかは、推察できると思いますが曰くその通りのエピソードを取り上げています。

歴史小説だからこそ可能な、大胆な仮説もありませんし、概ね定説として伝播している姿勢で執筆なさっていますが、私にとっては「ポルトガル船が来てから根来寺・国友村に伝来」までの知識が曖昧だったので、この件をどう扱われているのか興味を持っており、こと種子島高堯とその周辺の動き(特に禰寝氏との争いなど)が面白く扱われていたのは参考になりました。

 

文書として詳細は残っていないのでしょうし個人的なイメージですが、その後「根来寺・国友村・堺」などを中心に日本での鉄砲製造が活況を呈する時期を、もっと掘り下げて扱って貰えたらと云う恨みは少し残りました。

ともあれ、信長を柱にして小説を書くのはプロの作家さんにとっても、結構難しいのは想像に難くありません(凄まじい数の創作・研究がなされているので)、そんなテーマを扱っても面白く読ませる門井さんの筆力で、最後まで飽きることなく読ませていただきました。