殿や若はどうやら季節、年齢、様々な条件によって
それぞれの習慣、マイブームが変わってくるようです。
少し前のことになりますが、殿は一時期、
陸場に上がったまま顔だけ水につっこんでウトウトするというのが楽しいようでした。
最近はもうしないんです。
気がつけば顔だけポチャリ。
振りかえれば顔だけポチャリ。
じっと見つめていても顔だけポチャリ。
何故だ。
何故なんだ!
何度か、ピクリとも動かない殿がそのまま天に召されてしまったのではと、
呼びかけてみたりしてわざわざ起こしてしまうこともあったくらいです。
まあ・・・呼吸はどうにかするんだろうけど、
でも何故わざわざ陸場にあがっているのに顔だけ水に漬けるんだ!
寒いのか!
ライトが熱いのか!?
それとも陸場にはいたいけど動かずに口をすすぎたいのか!?
そんなただの寝転がったままポテチみたいなただの怠慢なだけなのか?
かったるいのか?
冬だからかったるいのか!!!???
(注:冬場は多くのカメさんが省エネモードです。)
あれこれ考えながら、屈んで水に浸かったまま目を閉じている殿の顔を、
ちゃんと生きているかじっと見る。
鼻腔に呼吸の気泡がくっついている(以降「鼻プー」と称す)。
大丈夫、生きている。
と見つめていると、半透明のまぶたの下は覚醒していたようで、
じわっと目をあける。
そっと手をあげて、やっほぅ、と小さく手を振る。
おや?と殿がしっかりと覚醒してこちらを見つめる。
・・・・・・楽しい。
殿は体は陸場にいるのに水の中で視線をかわす。
ぶふふふふふ。楽しい。
すると殿が「おや、姐御」と水から顔をあげてしまう。
それで、ぼくも水槽の水面よりも下に屈み込んでいたのを、
にょきっと目だけ上から出して、
顔の横で小さく「やっほぅ」と手をふる。
ちょうど殿とは体勢が逆な感じだ。
もちろんぼくは水に潜っているわけじゃないけど、
殿からすれば、ぼくの体は水の下にあるように見えるだろう。
「お」と殿が少し興味をひかれたような顔つきになる。
何故だろう。あんなに表情が豊かなのは。
それで、ぼくはいつもは指で「上に上に」と示しているところを
その日は「下に下に」と逆に指差した。
「なんですかい?」
と殿には伝わらない。
だから、もっかい顔を水につけてよ、下、下。
とぼくはまた下を指差して、動かす。
そして、また水面の下に屈んだ。
それで水の中に殿の顔があらわれるのを待ったのだけど
殿は顔を水に漬けない。
さっきまで漬けっぱなしだったくせに!!!
それでそうっと上を覗くと、
殿が楽しげに覗き込んでいて
「あ、いつものかくれんぼでやんすね。
フフフ、そこにいるのはわかっているんでやんすよ、姐御」
と、得意げだ。
いや、違うんだ、違うんだよ。
水中で視線をかわしたいんだよ。
それでぼくがじたばたと屈んでみたり、下を指差していたりすると、
「フ・・・」
と、殿が苦笑したんですよーーーーーー!!!
「なにがしたいのん、姐御」
って、言ってたんですよーーーーーー!!!
さっきまで自分は溺死体みたくなってたくせにーーーーーー!
それで、あまりバタバタして殿が本当にびっくりして(あるいは煩わしがって)
水の中へ戻っていってもアレなんで、
いや、もういいです・・・ありがとうございましたーーー!!!
と、あくまでそっとじわっとフェードアウトしときました。
んもうっ。愛してるよ、殿ってばっっ。