前回の続き。
では、なぜそんなに必死にネタを探すのか……。
それには様々な要因があります。
その一つとして、面白いネタを放送し続ける=クリエイターとしての能力を示し続けないと、
どんどん有能な人間が登場してきて、
「お前がいなくたって、替えはいくらでもいるんだからな」
こんな宣告をされてお払い箱になってしまうのでは、
というリストラ恐怖症が身に染み付いている業界ということがあるでしょう。
しかし、もっとも恐ろしいのは、スポンサーが広告枠(CM)を買うために、
数千万円もの大金を支払っているコーナーを、
自分ひとりの責任で完成させなくてはならない、というプレッシャーです。
ネタが見つからないからと言って、同僚のディレクターが
ネタを譲ってくれることはありません。
同僚にだってそんな余裕はありませんから。
もちろん、上層部がネタを用意してくれることもありません。
決まらないのは担当ディレクター個人の能力の問題なのです。
加えて、自分がネタを決められないと、迷惑を掛けることになる人間の数が
半端ではないのです。
スポンサー企業はもちろん、番組スタッフ、番組プロデューサー、
放送局の営業担当者、自分の所属する制作会社にまで被害がおよびます。
毎度毎度の放送で「数千万円の責任」というプレッシャーが
自分にのしかかってくるのは、並大抵のストレスではありません。
私が働いていたときにも、そのプレッシャーをめぐる事件がありました。
とある日、放送を終えたスタッフルームに一本の電話が鳴り響きました。
電話の主は、その日、ロケを担当していたカメラ技術のクルーからでした。
「出発時間になってもディレクターが姿を見せないんだけど、
スタッフルームにいる?」との問い合わせです。
スタッフルームに姿はなく、あわてて、手の空いている人間で
心当たりを探して見たものの、一向に見つからない。
自宅に連絡を入れても本人は不在、家族は行方を知りませんでした。
幸い、撮影スケジュールを記した紙が見つかり、
代理の撮影ディレクターが取材現場に向かうことで落ち着きました。
代理が現場に到着してみると、担当ディレクターが
行方をくらませた理由がすぐに判明。
なんと、スケジュールに記されていた現場では取材拒否をされており、
次の現場は改修工事の真っ最中で、とても撮影できる状況になかったのです。
担当ディレクターは、代わりのネタが見つからず、コーナーが埋まらないと悟り、
恐ろしくなって逃亡してしまったのです。
話は少し逸れてしまいましたが、テレビマンは失踪してしまうほどの
プレッシャーを常に抱えながら、いつも仕事をしているのです。
ちなみに、コーナーに穴が開いた場合は、
ほかのニュース枠などの時間配分を増やして対処します。
めったにありませんが。