時々、無になる瞬間が私にはある。
それはほんの僅かな数秒間だが、それがたまらなく心地良い。
朝起きて、寝ぼけ眼でコーヒーを何とか作り、タバコを吸っている時にふと来たりする。
頭の中には何もなく、自分が誰でここが何処なのか、そんなことすらどうでもよいことのように思えてしまう。
この前は銭湯の水風呂に入っている時に巡り会えた。
始めの5分間は冷たさとの格闘だが、それを越えると次は身体中がビリビリと痺れてくる。
それをも越えた時、ふっと突然に無がやって来たのだ。
世界各地で起こっているあらゆることや、私の身の回りで起きていることも、そんなことはとてもちっぽけなことの様に思えて、私は何か背中から翼が生えて今にも何処かへ飛び出してしまえそうな程、自分という鎖から解き放たれた気がするのだ。
ほんの僅かな数秒間だが、私は何にでもなれ、何でも出来そうな、そんな生き物になれるのだ。
私は誰だ。