自民党は4月12日,高市早苗総理大臣が就任後,初めての党大会を都内のホテルで開催した。高市総理は総裁演説の中で,「立党から70年,時は来た」 「(憲法)改正の発議にめどが立ったと言える状態で,来年の党大会を迎えたい」などとと述べ,憲法改正の発議に強い意欲を示すとともに,公約の実現を急ぐことで「選挙に勝ち続ける強い自民党をつくる」と強調した。
永田町関係者は,「先の衆院選で大勝した影響もあってか,党大会は非常に明るく,活気のある雰囲気の中で行われていた。私的には特に会場が盛り上がったように感じたのは,歌手の世良公則氏のステージと,現役の女性自衛官が国歌斉唱した場面であったように思う。世良氏は,特別ゲストとして出席し,ステージ上でヒット曲『燃えろいい女』を歌唱し,歌詞の一部分を『早苗』に替えるサービスぶり。これには,総理も満面の笑顔で応えていた。世良氏は,昨年の参院選で大阪選挙区から立候補して約25万票を獲得したが落選している。『次期参院選では自民党公認で出馬か』と思わせるほど,会場は大盛況であった。現役の女性自衛官が制服で特定の政党のイベントで国家斉唱することに,驚きと戸惑いを覚えた参加者も多かったのではないか。会場は盛り上がり,小泉氏(防衛相)は何の問題もないかのように満足気に笑っていたが,国会議員らからは『これは問題になるぞ』との声が囁かれ,組織の事情で参加していたであろう女性自衛官が気の毒になってきた。高市総理は『強い日本』を作ることに強い意欲を見せ,憲法改正の加速化を強調しているが,今やるべきことは,国民が大いに期待している『物価高対策』であろう」と,同党大会での違和感に言及する。
自衛隊法61条では「隊員は選挙権の行使を除き,政治的行為をしてはならない」とされており,今回の現役自衛官の党大会出席について,法に抵触する可能性を指摘する声が上がっている。
日本共産党の山添拓政策委員長は14日の参院外交防衛委員会で,陸上自衛隊中央音楽隊のソプラノ歌手,鶫真衣3等陸曹が自民党大会に出席し,国家斉唱したことに関して,「憲法への自衛隊明記を目指す高市総理のもとで起きた,目に余る政治利用と思っている」と述べ,「私人」での出席と主張する自民党や小泉進次郎防衛相の対応を厳しく批判。「党大会を演出し,報道を通じて世間の耳目を集めようという政治利用目的の行為というほかありません」と指摘した上で,香川県にある陸上自衛隊第14音楽隊の公式サイトには,「政党からの依頼,政治的活動に関与する場合は依頼を受けることはできない」と記してあると追及した。
国民民主党の榛葉賀津也幹事長も同委員会で「今,ネットでもニュースでも,自民党大会の3等陸曹の国歌斉唱が話題になっているが,御党の幹事長は,『個人的な依頼をした』と。個人に依頼し,個人が受けて,個人の問題だと。これじゃ,彼女がかわいそうだ。この3等陸曹は,まったく悪くないです」などと小泉防衛相に対し苦言を呈した。
この問題に関して,小泉防衛相は同委員会で,自衛隊法61条には抵触しないとの認識を繰り返し強調。「職務ではなく,私人としてイベント会社からの依頼を受けて国歌を歌唱したと聞いている。国歌を歌唱することが政治的行為に当たるものではなく,今回の件は自衛隊法違反に当たらないと認識している」と主張している。
なお,木原稔官房長官は15日,衆議院の内閣委員会で,現役自衛官の国歌斉唱に関して,「法律的に問題がなくても政治的に誤解を招くことは別問題だ」として,「しっかりと反省すべきものだと考えている」と話す一方,「上のレベルまで報告が上がっていなかったことが問題であり,報告があれば“別の判断もあり得た”」との認識を示した。
上記関係者が指摘するように,図らずも「時の人」となってしまった女性自衛官が気の毒になってきた。〆