高市早苗首相の台湾有事を巡る「存立危機事態」発言で,中国側の反発がエスカレートする中,26日に行われた高市首相と立憲民主党の野田佳彦代表による党首討論での高市首相の「そんなことより」発言が波紋を広げている。

  永田町関係者は,「野田氏はこの日の討論の冒頭,首相に『国家百年の大計に立ち,将来世代に良い国を残していきたい思いは共有できると思う』などとと呼びかけた。この『国家百年の大計』は,松下幸之助氏(松下政経塾創設者)が好んで使っていた言葉で,野田氏と首相は,松下政経塾の先輩と後輩で,互いによく知る間柄なのだ。私には,その言葉に何か重要なシグナルがあるように感じた。野田氏は,まるで先輩が後輩の面倒を見るかのように,野田氏は首相の『軽率な発言』を修正して,中国との緊張がエスカレートする関係を早期に修復したかったではないか。そして,野田氏は,台湾有事を巡る高市首相の国会答弁の真意を尋ねた際,具体例が出なかったことを指摘して,『事実上の撤回をしたと受け止めた』と発言したのだ。ところが,野田氏は想定外にも再び首相の『軽率な発言』を引き出してしまった。野田氏が企業団体献金規制を迫ったのに対し,首相が『そんなことより定数削減をやりましょう』と唐突に話をすり替える発言をしたのだ。この言葉には驚いた。自民党が,多くの国民から猛批判され,信頼を失って低迷した要因である『政治とカネ』の問題が,『そんなこと』なのだろうか。官房長官(木原稔)が釈明していたが,党の『解党的見直し』による再生を期待している私にとってはあまりに衝撃的な首相の発言であった」と首相の「そんなことより」発言に疑問を呈する。

公明党の斉藤鉄夫代表は,『そんなことより』発言について,「企業・団体献金の規制というのは『そんなこと』なんでしょうか。私はそこに政治改革への取り組みの姿勢,疑問を感じざるを得ませんでした」などと高市首相を批判。公明と共に企業献金の受け皿を限定する法案を国会に提出した国民民主党幹部も,「あれは良くない」と苦々しい表情だった。

野田代表は,Xに「政治は信頼の積み重ねです」とし,「私たち立憲民主党は一丸となって,政治の信頼回復を進めます」などと投稿。党会合では,「われわれは『そんなこと』を重視して戦う」と宣言。27日,立憲民主は国民民主・公明案を大筋で了承。今国会成立へ3党が足並みをそろえることとなった。また,チームみらいの安野貴博党首は,国公案への賛成について「可能性はある」と語った。

さらに,定数削減に反対する日本共産党の田村智子委員長は26日,Xで「裏金,金権腐敗,政治資金パーティーでの金集め,政治とカネの問題での国民の怒りや選挙での審判を『そんなこと』と切って捨てる。そして,民意切り捨てに直結する『定数削減』を総理大臣がやろうとけしかける」と不快感を示し,「首相の本音」が「次々と露呈している」と投稿した。また,れいわ新選組の高井崇志幹事長も会見で「本当に情けない。明確に反対だ」と主張した。

野党との溝が深まる中,自民と日本維新の会は,企業献金規制を検討する第三者委員会設置に向け法案を提出する方針であるが,事実上規制を先送りする内容であり,今国会での定数削減法案を成立させるのは難しい情勢となっている

なお,木原官房長官は27日,「党首討論におけます個々の議論の内容についてこの場で政府の立場からコメントすることは差し控えます」と前置きし,「高市総理は党首討論のもう残り時間がなくなる直前であった中で,急いで話題を転換する趣旨でそのような表現を用いたものと受け止めております。また政治改革について高市総理は国民の皆様の政治への信頼を回復するための改革にも全力で取り組んでまいると,そういった旨を述べられているものと承知しています」と釈明した。高市首相の「そんなことより」発言を,国民はどのように受け止めたのだろうか。