旧民主党で幹事長などを務めた輿石東元参院副議長は12日,都内ホテルで約200人が出席して,自身の回顧録「疾風に勁草を知る」の出版記念パーティーを開催した。同パーティーには政界での交流の深さから与野党の重鎮が出席。自民党からは麻生太郎副総裁,甘利明元幹事長,石井準一参院国対委員長,古賀誠元幹事長らが,立憲民主党からは泉健太代表,野田佳彦元首相,小沢一郎衆院議員,菅直人元首相らが出席しており,鳩山由紀夫元首相の姿もあった。

 輿石氏は「政治も経済も教育も人の心と心が通じ合った時に信頼が生まれ,すべてのことが解決されることを学んだ80年あまりの人生だった。ご縁返しのつもりで残された時間を精一杯頑張る」などと挨拶。

 壇上でのスピーチでは,泉代表は「大同窓会のような,さながら党大会のような雰囲気を思い出した」と旧民主党の〝先輩〟を持ち上げると,「風に耐え抜き,その時こそ真価を問われる」などと「解散風」を念頭に挙党態勢の構築を同僚議員に呼びかけていた。

 また,麻生副総裁は「輿石氏は『自分がこれは』と思ったことは立場がどうであれ曲げずにきちんとやってくれる。ますます活躍いただき,立憲民主党の泉代表あたりをしっかり指導してもらいたい」と他党党首の指導を呼びかける一方で,小沢衆議院議員は乾杯での挨拶で「麻生氏はじめ自民党の方も来ているが,自民党政権はようやくほころびが見え,崩壊の日は近いと思っている。政権交代を成し遂げることが輿石氏の大恩に報いる唯一の道だ」と訴え,今の政治状況を踏まえて互いの党をけん制する場面も見られた。

永田町関係者,「今時,『パーティー』というと抵抗のある政治家が多いだろうが,まるで旧民主党の同窓会のような顔ぶれで久しぶりに懐かしい面々と交流できた。輿石さんは議員当時は『参院民主のドン』と呼ばれるほど柔軟な調整力を発揮して,与野党の垣根を越えた信頼関係を築いており,その政治力の一端は今日の出席者からも伺えるだろう。今の政治状況からか与野党を意識した発言が多く,伊吹さん(自民・伊吹文明元衆院議長)は『泉さんをあまり指導し過ぎて,立派な党首にし過ぎないようによろしくお願いします』などとスピーチ。また,麻生さんの上川さん(上川陽子外相)に対する容姿発言を意識してか,千葉さん(千葉景子元法相は『そんなにハンサムだというわけにはいかないが,女性には絶大なる人気と信頼を得ている』などとスピーチして会場の笑いを誘っていた。歓談の場面では与野党問わない大人の交流であったが,政権交代を念頭に候補者擁立を目指す泉君と野党共闘を目指す小沢さんの間には微妙な空気感を感じたのは私だけではなさそうだ」などと会場の状況を語る。

立憲は,衆院補選全勝の勢いを次期衆院選まで維持して,政権交代を実現させたいのだろうが,上記関係者は,「今の野党をまとめるのは政権交代より難しいのではないか」と語っている。野党共闘を実現させるためには輿石氏のような幅広い人脈と人間力を持った政治家の出現が,今こそ立憲には必要なのだろう。