自民党は4日,派閥の裏金事件をめぐり,安倍派,二階派計39人の処分を正式に決めた。安倍派の安倍派座長の塩谷立元文部科学相,参院側トップの世耕弘成前党参院幹事長を8段階ある処分のうち2番目に重い「離党勧告」とし,派閥運営を担う事務総長経験者の下村博文元文科相,西村康稔前経済産業相を3番目の「党員の資格停止」(1年)とした。4氏はいったん廃止した現金による還流を復活させる幹部協議に参加しており,組織的裏金作りへの関与が強いと認定された。

残りの処分対象者としては,安倍派の高木毅前国会対策委員長は「党員の資格停止」(6カ月),萩生田光一前政調会長,松野博一前官房長官,二階派事務総長の武田良太元総務相は6番目の「党の役職停止」(1年)となり,一部の派閥幹部と不記載総額が2千万円以上を「党の役職停止」(1年),1千万円以上を同6カ月,1千万円未満を2番目に軽い「戒告」とした。

永田町関係者は,「処分の内容については,国民の視点からだけでなく,自民党の現職国会議員らからも処分の内容が軽いではないかとの指摘の声が多いのが萩生田氏である。萩生田氏は安倍元首相の側近中の側近として要職を歴任し,裏金の額も2千万を超え,既に役職を辞任しているにもかかわらず,処分案は『党の役職停止』と実効性のない肩透かし的なものになっている。萩生田氏の安倍派内での影響力の大きさを知っているものからすれば,安倍派の座長,参院のトップという立場であったとして重い責任となった塩谷氏や世耕氏と同等の処分である『離党勧告』でもおかしくないと思う。萩生田氏は麻生氏(麻生太郎自民党副総裁),菅氏(菅義偉元総理),森氏(森喜朗元総理)ら自民党の重鎮と良好な関係を構築しており,岸田総理は次期総裁選を念頭に,萩生田氏の政治力に配慮した処分内容になったのではないかともいわれている。そうだとすれば,属人主義的な処分内容と批判されてもしかたがないだろう。ところで,岸田総理は森氏からも裏金問題に関する聞き取りを実行したのだろうか。森氏が人を介して岸田総理に説明したとの情報は流れてはいるが,総理自ら直接聴取したかどうかは分からないままの処分決定だった」と消化不良の様子で裏金問題をめぐる処分内容について語った。

一連の裏金問題では,岸田総理自身の処分は見送られて,今回国会議員39人が処分されたが,党内では処分内容に対する不満の声がくすぶっている。離党勧告を受けた塩谷氏は「確たる基準や対象行為も明確に示されず不当だし,処分認識の理由に誤りがある」などと猛反発し,再審査請求を検討する意向も表明した。今回の処分で同問題が決着したとはいえない中,岸田総理は政治資金規正法の改正を進めることで今後の国会を乗り切る構えであるが,党内はもはや学級崩壊状態であり,強いリーダーシップを発揮できない総理にとって難しい政権運営となりそうだ。