処理水の海洋放出が始まる。

国内外でこれほど多くの反対の声が上がっているにもかかわらず,政府と東京電力は,最初に放出する処理水に含まれる放射性物質トリチウム濃度を検査し,基準を下回っていることが確認できれば,24日午前にも結果を公表後,午後にも放出のためのポンプを起動。福島第1原発の処理水の海洋放出を開始する。

福島で取材を続けるジャーナリストは,「私が取材する限り,福島第1原発のアルプス処理水の海洋放出を行うことに,漁業者など地元の関係者は納得していない。『政府はなぜ私たちの声を聞こうとしないんだ』という声が圧倒的である。首相と面会した全国漁業協同組合連合会の坂本雅信会長は,科学的な安全性には理解を深めてきていると発言したが,反対するという立場を堅持する旨明言しているし,故安倍首相が直接約束した地元福島の漁業関係者や自治体首長とは岸田首相は面会もしていない。地元の理解を得ないままの放出だ。坂本会長とのやり取りは,まるで放出ありきのセレモニーを見せられた思いだ。コストがかかるというリスクはあるが,専門家は水蒸気化や電気分解など海洋放出以外の選択肢があると主張する。海が徐々に汚染されていくことを考えれば,別の選択肢が必ず私たちの未来のためになるだろう。岸田首相は歴史的な判断ミスをしていると思う」と処理水の海洋放出に憤る。

また,永田町関係者は,「私の釣り好きの知人が東日本大震災直後,『被災者が海で行方不明になっており,原発事故の影響もあり,三陸沖で釣った魚はとても食べられない』と話していた。政府は,アルプスで処理しても放射性物質のトリチウムは除去できず,規制基準以下とはいえセシウム,ストロンチウムなどトリチウム以外の放射性物質も含まれていることを認めている。海で放射性物質が徐々に蓄積されていくことを考えれば,人体への影響だけでなく,自然環境の破壊も考えられるだろう。関係者が同意しないのは当然だ。私自身も復興支援しているが,福島の人には申し訳ないが,処理水が流出している海で獲れた魚を食べたいと誰が思うだろうか。海洋放出すれば,漁業だけでなく,観光などの様々な産業にも影響が出るだろう。復興途中の福島にとっては大打撃だ」と海洋放出に反対する。

政府は処理水の海洋放出に関する科学的根拠を納得いくまでは丁寧に説明するということだが,これは反対の声には耳を傾けないということを意味することが明らかになった。政府が一方的に放出を強行する以上,今は司法により放出を差し止めてもらうしかないだろう。

福島県内の住民らが23日,同県いわき市内で記者会見し,国と東電に対して放出差し止めを求める集団訴訟を福島地裁に起こすと発表した。

弁護団によると9月8日に提訴予定で,原告団は漁業関係者や原発事故被災者ら100人以上になる見込み。10月末までに第2陣の提訴準備も進めるという。

関係者の理解を得られないままの処理水の海洋放出。その影響は計り知れないほど大きな代償になるように思える。