8日の政府与党政策懇談会で防衛増税を突然表明した岸田文雄総理大臣。

波紋が広がる中,岸田総理は,「今を生きる国民が自らの責任として,しっかりその重みを背負って対応すべきものである」とし,増税は「国民の責任」とまで言い切っている。

ウクライナへのロシアによる侵攻から,「軍事力には軍事力で」「軍拡には軍拡で」対応すべきことを,岸田総理は今後「国民に丁寧に説明する」ということなのだろうが,国際紛争を解決する方法として「軍事力の強化」が適切であろうか。

そんな中,独自に平和外交による国際紛争の解決を一貫して主張し,実践している政党がある。日本共産党だ。

今年9月,日本共産党の志位和夫委員長は,野党外交の一つの新しい発展方向として「ヨーロッパの左翼・進歩政党との交流,協力を強めていく」との方針を表明し,この方針の第一歩として,11月上旬から緒方靖夫副委員長・国際委員会責任者を団長とする党代表団をヨーロッパに派遣すると発表した。

詳細については赤旗を参考にしてもらいたいが,志位氏は,ヨーロッパの左翼・進歩政党について,「いま直面している国際連帯の諸課題について,『軍事同盟のない世界をつくる』『核兵器のない世界をつくる』などの大きな方向で協力が可能であり,それぞれの国で政治的影響力を持ち国政選挙などでも健闘している政党が,一連の国々で存在している」と指摘。「発達した資本主義国で活動する政党同士が,さまざまな交流を行い,学び合い,一致点で協力していくことは意義あるものと考えてこういう方針を確認した」と述べ,これまでも欧州の諸党とは党大会への参加や代表団を迎えるなどの交流をしてきたとし,今回の代表団派遣は交流の本格化に向けたものだと説明している。

この党の方針を受け,緒方氏は,今月9日から11日までの間,ウィーンで開催された欧州左翼党第7回大会に参加。

スペイン共産党を中核とする「統一左翼」のシラ・レゴ欧州議会議員,ギリシャの前与党・急進左派連合「SYRIZA」代表団のバシリアジス副書記長,カトルガロス国会議員,英労働党のジェレミー・コービン前党首らと連日懇談し,欧州だけでなく世界の左翼勢力が軍事ブロックと軍事費の大幅拡大に反対することを互いに確認した。

また,志位氏も,11月18・19両日にトルコ・イスタンブールで開かれたアジア政党国際会議(ICAPP)総会に参加。その成果について,「日本共産党が訴えてきた憲法9条を生かして東アジアに平和を創出する『外交ビジョン』の方向が,アジアの政党の総意として確認されたのが『イスタンブール宣言』だ」と意義を強調している。(詳細は赤旗参照)

なお,この際,志位氏は,政府の「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」が発表した報告書について,「実に愚かで危険な文書」「一言で言えば“戦争国家づくり”の青写真」と批判し,次の3点の見解を述べている。

第1点は,報告書が「反撃能力」=敵基地攻撃能力の保有と増強が必要だとして,今後5年を念頭に,同能力を持てるようにするとしている問題で,志位氏は,「(従来の政府憲法解釈を)いとも簡単に変えた。敵基地攻撃能力の保有については,従来の政府の憲法解釈の答弁でも,敵の基地を攻撃すること自体は『法理上は許されないわけではない』としながらも,そういう能力を平素から保有していること――相手国に脅威を与えるような能力を保有することは憲法上できない―これが(政府の)憲法解釈だった。その憲法解釈との整合性をどうとるのかは一切書いていない」と批判。さらに,志位氏は「敵基地攻撃能力保有の重大な危険は,日本がどこからも攻められていないのに,アメリカが海外で戦争を始めた場合に,日本が安保法制=集団的自衛権を発動し,敵基地攻撃能力=『反撃能力』を使って米軍とともに相手国に攻め込む,ここに重大な危険がある」と指摘。「日本が攻められていないのに,アメリカの戦争に日本が参戦することで,相手国から見れば,事実上の先制攻撃になる。そして日本に戦火を呼び込む。そういう深刻な問題点もこの間の質疑で明らかになってきたが,一切そういう問題を検討した形跡すらない。“反撃能力を持つのは当たり前”と言わんばかりにいとも簡単に書かれていることは大問題だ」と強調している。

第2点として志位氏は,大軍拡の財源について報告書は「国民全体で負担する」としているが,「よく読むと,『企業の努力に水を差すことのないよう,議論を深めていくべきだ』という。大企業からは取らずに,国民全体で負担するといったら,消費税ではないか。結局は消費税を上げる道を開き,大軍拡のために大増税するというとんでもない報告書だ。こういう方向は,軍事対軍事の悪循環をつくり出し,日本を危険にさらすだけでなく,国民の暮らしを押しつぶすことになる」と批判した。

第3点として,「この文書には外交戦略が一言もなく,軍事のことしか書いていない。まさに外交不在,軍事一辺倒の文書だ」と指摘。「憲法9条に基づく外交戦略こそ,いま強く求められている」と述べた上で,日本共産党は一野党であっても,ICAPPという場で「9条に基づく平和外交」について知恵を絞った取り組みを行い,アジアの政党の前向きの合意をつくるために貢献してきたと強調。ところが「自民党にはどういう外交によって日本の平和を守っていくのかは何もなく,軍事一辺倒しかない」として,「実に愚かしい文書で,危険な文書だ」と強調した。

さらに志位氏は,同報告書は繰り返し「自分の国は自分で守る」と言っているが,「それはうそだ」とズバリ。ハワイ沖で行われた日米合同軍事演習「リムパック」で,集団的自衛権の行使を前提とした合同演習を行ったと日本政府が発表しているとおり,「アメリカが世界のどこかで戦争を起こしたときに,集団的自衛権を発動して,自衛隊が一緒になって戦争をやる。『自分の国を自分で守る』という話ではない。アメリカを守るために大軍拡をやる,大増税をやる,これがことの本質だ」と訴えた。

永田町に精通する記者は,「岸田政権の防衛増税を予期していた志位委員長の警鐘が今や現実味を帯び始めている。岸田総理は,その『人の話を聞く耳』をどこに傾けているのだろう。とても円安やコロナ化で厳しい日常生活を過ごしている国民に向けられているようには思えない。アメリカから軍事力増強の負担を要請されたのだろうか。国民は今こそ減税を期待しているのだ」などと述べ,官邸と国民の感覚の大きな隙間を感じていた。

円安やロシアによるウクライナ侵攻の影響で,食料品など生活必需品が値上がりされる中での岸田総理の「増税」発言。耳を疑った国民も多いことだろう。