8月,米下院のナンシー・ペロシ議長が2,3両日台湾を訪問し,蔡英文総統と会談した以降,台湾周辺の空・海域での緊張が高まっている。中国本土と台湾は不可分とする「一つの中国」原則を掲げる中国は,諸外国が台湾を独立国のように扱う高官同士の往来に以前から強く反対しており,米大統領職の継承順位で副大統領に次ぐ要職のペロシ氏による訪台に猛反発した。
中国は,事前予告した4日から7日までの軍事演習の終了後も,中国人民解放軍で台湾方面を管轄する中国軍東部戦区が一部の海空域で演習を継続。台湾を囲む6カ所の海空域で11発の弾道ミサイルを発射。
日本の防衛省によれば,5発が日本の排他的経済水域(EEZ)に落ち,うち4発は台湾上空を通過ている。
また,台湾国防部(国防省)によれば,台湾海峡周辺で中国軍機39機,軍艦13隻の活動を確認。中国軍機の多くが台湾海峡の中間線を越えたと発表した。台湾外交部(外務省)は8日,「地域の平和と安定を危険にさらす不合理で野蛮な行為」と中国を強く非難するコメントを発表,台湾陸軍は9日と11日に南部で重砲射撃訓練を実施した。
ペロシ氏の訪台について,米国内では批判的な論調もあるが,対中強硬論は民主党・共和党を問わず超党派的な支持があり,秋の中間選挙に勝利したいバイデン政権としても,中国に譲歩的な対応は示せない状況だ。,
一方,中国側は「台湾封鎖」や有事さえ想定した作戦の一端を見せつけることで,今も米台接近を激しくけん制している。
ペロシ氏の訪台後も,米国の議員による訪台が続いており,東部戦区は26日,台湾周辺の空・海域で警戒パトロールと実戦的な訓練を最近行ったと発表。東部戦区は「台湾海峡の情勢変化」に対応した「常態化した軍事行動」だと説明し,「国家主権の安全と,台湾海峡地域の平和,安定を断固として守り抜く」と強調した。
台湾問題に精通する永田町関係者は,「台湾問題の解決には,台湾に居住する住民の民意が尊重されるべきであり,ウクライナへのロシア侵攻同様,軍事力などによる非平和的な手段による変更は絶対に許されない。戦争が現実味を帯びている今,台湾有事となれば沖縄が先ず戦渦に巻き込まれる可能性は高く,これ以上の軍事的緊張は回避しなければならない」などと戦争への危機感をもって警鐘している。
ウクライナにロシアが軍事的侵攻をしてから半年以上経過し,多くの犠牲や悲劇を生んでいる。今も昔も戦争にはハッピーエンドがないことを私たちは歴史から学んでいるはずだ。