東京オリンピックに出場するために来日し,1日に第三国への亡命を希望したベラルーシの陸上女子代表,クリスチナ・チマノウスカヤ選手が在日ポーランド大使館に入り,ポーランドに亡命した。
同選手は,「SNSへの書き込みをめぐり政権批判だとして強制送還されそうになった」などと,このまま帰国することに生命の危険を感じると訴え,羽田空港で帰国を拒否。
コーチとの次の会話が公開された。
チマノウスカヤ選手「このまま帰国したら,私に競技を続ける意欲が残ると思う?」
コーチ「残るかもよ。もはや200メートル走に出ても何の得にもならない」
「『(指示に従えば)生きられたのに愚かだった』と国民は言うよ。誰に何を証明したい?」
チマノウスカヤ選手:「誰にも何も証明したくない。私はただ走りたいだけ」
また,同選手は「圧力を受けており,私の同意なく国外(日本から)に連れ出されようとしています。そこでIOCの介入を求めることにしました」とIOC(国際オリンピック委員会)に問題への介入を求めた。IOC・アダムス広報部長は「私たちは彼女を支援します。彼女の要求が満たされることを願い,賛同しています」として,同選手から聞き取り調査を実施。その後,在日ポーランド大使館に入った。この瞬間,安堵した人は多いだろう。
ベラルーシは1991年のソ連崩壊後に独立した国の一つで,1994年以降,ルカシェンコ大統領が就任。欧米諸国からは「ヨーロッパ最後の独裁者」とも呼ばれ,国内では度々,退陣要求のデモも起きている。最近では,爆発物の発見を理由に緊急着陸させられた旅客機に搭乗していた反体制派メディア「EXTA」の共同創設者で元編集者のロマン・プロタセビッチ氏がベラルーシ当局に拘束されている。同氏はポーランドに亡命していたが,ベラルーシのメディアは,ルカシェンコ大統領が着陸させるよう命じたと報じている。
今回の問題に関連して,ベラルーシのルカシェンコ大統領の退陣を求めて抗議活動を続ける反政権派のチハノフスカヤ氏は,SNSの「テレグラム」で「チマノウスカヤ選手は今は安全な状況だ」としたうえで,「IOC=国際オリンピック委員会と日本の当局の迅速な対応や本人に亡命の受け入れを申し出てくれた国々に感謝する」と述べているが,チマノウスカヤ選手の戦いの場はオリンピックから民主化闘争の場に移行した様相だ。場所を変えた彼女の大いなる戦いの幕が開いた。